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2020-09-19 00:00
(連載2)日英経済連携協定雑感
緒方 林太郎
元衆議院議員
英国との関係では、上記の通り「英国側の焦り」があり、そこに日本が上手く付け込んだ感じです。一方、アメリカとの関係では、日米外交全体の中で「アメリカへの借り」が多かったため、アメリカの事情で遅れたものに日本が合わせたという感じです。二国間関係やそれぞれの国の国際関係が色濃く反映されている事を見て取っていただけるでしょう。
ところで、最後まで課題となった英国チーズの日本への輸出。元々の日本の関税率は29.8%です。ソフト系チーズは、EUに対して20,000トン(初年度)→31,000トン(16年目)の枠を設けて、その枠内での関税を徐々に削減していき、16年目で撤廃するという事にしていました。英国は名産品のスティルトン(ブルーチーズ)をこの低関税枠で輸出する事に拘っていました。しかし、英国に特別枠を設けると「対EU枠+対英国枠」となり過剰だというのが日本のポジションでした。最終的には、日EUに基づく低関税枠に余剰がある場合に限り、EU産チーズと同じ低い関税水準を適用するとなったようです。「英国への特別枠は設けない。日EUの枠内で。」と当初から茂木外相は言っており、その発言はきちんと守られました。そこは素直に評価していいでしょう。
ただ、私が不思議なのが、実務的に「余剰がある場合」を判断するのはいつなんだろうという事です。各年度のかなり後半にならないと、EUからどれくらいのソフト系チーズの輸入がなされていて枠の余りはどれくらいなのか、そして、英国産にどれくらいの枠を出してあげられるのか、なんて分からないはずです。となると、まず年度初めの4月の段階でスティルトンを輸入しようという業者など居ないはずです。低関税が適用されるのかが分からないからです。仮に輸入して国内販売するとしても、低関税を前提とした価格設定は出来ないでしょう。そもそも、この「余剰がある場合」に低関税となると、税の仕組みとして戻し税になるのではないかと思うのです。低関税が適用だと分かればその分は輸入業者さんに戻すみたいなイメージです。そんな状況では、「余剰がある場合」が確定的となる年度末しか、低関税の安いスティルトンは輸入されてこないのではないかという懸念がどうしても出て来るのです。
この程度の懸念は農水省や財務省のプロは重々分かっているはずです。今後、詳細を詰めると言っているので、こういうおかしな事にならないような良い仕組みを考えてほしいと思います。私、ブルーチーズが大好きでして、フランスのロックフォール、イタリアのゴルゴンゾーラ、デンマークのダナブルーと並んで、英国のスティルトンも好きです。日本で安価で楽しめるようになってほしい所です。(おわり)
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