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2020-09-18 00:00
(連載1)日英経済連携協定雑感
緒方 林太郎
元衆議院議員
日英の経済連携協定が「大筋合意」しました。自著「国益ゲーム」に書いたのですが、この「大筋合意」と呼ばれるものには「良い合意」と「悪い合意」があります。良い合意というのは、本当に大筋で纏まっていてあとは細部を詰めるだけというものです。悪い合意というのは、積み残しがあるにもかかわらず、政治的にプレイアップするために「大筋合意」と発表してしまうというものです。悪い合意をしてしまうと、あとは本合意に向けて、積み残しの細部でどんどん追い立てられて不利になっていきます。なお、後者は日米貿易協定でして、大筋合意してからもかなりゴタゴタして、それを取り繕うために奇妙奇天烈な理屈がどんどん出て来ました。一方、今回の日英経済連携協定は前者であるように見えます。
全体像が分からないので何とも言えないのですが、公表されている限りですと「日本が英国の足元を見て優位に交渉した」ように見えます。英国は今、EUとの離脱交渉が全く上手く進んでいません。双方が「相手が悪い」と非難合戦をやっています。そういう中、英国としては「EUとは上手く行ってないけど、上手く行っているケースもあるもんね。」という成果を取る事こそ政治的に価値が高かったはずです。それが日本との経済連携協定交渉でした。つまりは英国の「メンツ」です。何処を見てそう思ったかというと、自動車の関税です。EUと同じペースで下げて、2026年2月でゼロになります。ここでポイントは「EUと同じペースで下げる」という事です。EUとの経済連携協定は2019年2月発効で、自動車関税を8年目で撤廃します。今回の協定は2021年1月発効でしょうから、実質的には協定発効後6年目で関税撤廃する事になります。「おたくの事情(BREXIT)でこの交渉をやっているんだから、EUのペースと合わせろ。」という主張して、それを通したという事です。
「そんなの当たり前だろ」と思うかもしれませんが、そう事は簡単ではありません。日米貿易協定では、日本はアメリカに対して同様の事をやっています。そして、アメリカは日本に対して同様の事をやってくれていません。アメリカのTPP離脱という「おたくの事情」があったにも関わらず、日本は(先に発効している)TPPでの関税引下・撤廃のスケジュールをアメリカにも適用するように求められ、それを飲んでいます。しかも、アメリカ側の関税引き下げはTPPで取り付けたものとは全く見合わないくらいレベルの低いものでした。
英国との関係では「おたくの事情(BREXIT)で、おたくの関税削減のスタートの時期が日EUと比較して遅れるのだから、そのスケジュールは日EUに合わせろ。」と主張し、アメリカとの関係では「おたくの事情(TPP離脱)で、おたくの関税削減のスタートの時期がTPPと比較して遅れているけども、そこは一切追求しません。そして、うちの関税削減のスケジュールはTPPに合わせます。」となっています。(つづく)
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