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2020-09-08 00:00
(連載1)香港国家安全法違反で捜査共助要請を受けたら
緒方 林太郎
元衆議院議員
香港国家安全法をめぐる状況の変化を受け、日中間の刑事分野での協力関係を停止すべきだとの声があります。まず、物事を整理すると、日中間に犯罪人引渡条約はありません。一方、刑事共助条約があります。両国間で捜査協力するための二国間国際条約です。そして、この刑事共助条約の運用停止を主張する方がおられます。
その気持ち自体は、よく分かります。ただ、この条約には運用停止の規定がなく、機能を止めるとすると終了しかありません。ウィーン条約法条約には運用停止について書いてある条項がありますが、このようなケースで使えそうなものはありません。基本的に、運用停止には双方の合意が必要です。そして、条約の終了については、相手国にその意図を通告してから180日後に終了します。しかし、気を付けなくてはならないのは、条約を終了させると日本にも不利益がかなりある、ということです。日本国内で犯罪行為を行って、中国に逃げ込んでいる人物への捜査協力が滞るからです。ですので、日中刑事共助条約の運用停止や終了は、全くお勧めいたしません。
というか、そんなことをする必要は無いと思います。通常、刑事共助条約には共助の拒否事由が定められています。一般的に、この手の刑事共助条約の常識として、政治犯は対象としないとか、自国で罰せられない行為は対象としない(双罰性)とかが盛り込まれます。日中刑事共助条約もその例に従って、そういう共助は拒否「できる」となっています。
ここで、この条約の拒否事由を定めた条文を引いてみましょう。
【日中刑事共助条約第三条】
1 被請求国の中央当局は、次のいずれかの場合には、共助を拒否することができる。
(1) 被請求国が、請求された共助が政治犯罪に関連すると認める場合
(2) 被請求国が、請求された共助の実施により自国の主権、安全、公共の秩序その他の重要な利益が害されるおそれがあると認める場合
(3) 被請求国が、共助の請求がこの条約に定める要件に適合していないと認める場合
(4) 被請求国が、共助の請求が何人かを人種、宗教、国籍、民族的出身、政治的意見若しくは性を理由に捜査し、訴追し若しくは刑罰を科する目的でなされていると、又はその者の地位がそれらの理由により害されると信ずるに足りる実質的な根拠があると認める場合
(5) 被請求国が、請求国における捜査、訴追その他の手続の対象となる行為が自国の法令によれば犯罪を構成しないと認める場合
(略)
【引用終了】
これを下敷きにして、香港国家安全法との関係を見てみたいと思います。(つづく)
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