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2020-09-01 00:00
(連載1)財政再建で高齢者の金融資産が犠牲に
中村 仁
元全国紙記者
絶望的な大きさの規模になった財政赤字を将来どうするのか。コロナ危機はこれまでの感染症のように出口があり、やがて終息します。むしろ、その後にくる財政危機の出口戦略は、コロナ危機よりずっと困難を伴います。高齢者層や富裕層に、危機打開の大きな負担を求めることになるとのシナリオを囁く声が聞こえてきました。高齢者層は現役世代の重い負担で年金も医療も、手当てされてきており、現役世代をこれ以上、痛めつけることはできない。高齢者や富裕層に負担と犠牲を求めるしか道はないと。
コロナ対策の外出、移動自粛、それによる不況、雇用不安で大きな影響を受けたのが現役世代です。若い世代はほとんどが無症か軽症です。重症化しやすい高齢者を守るという名目で、若い世代が犠牲になっています。金融資産(貯蓄)の大部分は55歳以上の年配層が保有し、54歳以下の大部分の現役層は、純金融資産(資産から債務を引く)を保有していません(日経のコラム大機小機、8/19)。財政再建を可能にするほどの増税は不況と失業増大を招くので、資産を持つ高齢者層に泣いてもらうということです。
コロナ対策のための財政出動が加わり、世界全体の公的債務の残高は2020年にGDP(国内総生産)の102%に達するそうです。日本は主要国では最悪で、国と地方を合わせると、1200兆円でGDPの約2倍となります。財政運営と改革の基本方針(骨太の方針、7月)では、継続的に掲げられてきた「財政健全化目標」の記述が消えてしまいました。そのことを指摘された安倍首相は「そんなの無理だよ。今は緊縮財政はできない。理論的な正しさと政治選択は違う」と、党幹部に答えたそうです。確かにコロナ対策は、国民の生命と健康がかかった現在の急務であり、政権は「何でもあり」の政策選択をしています。では、コロナ後にどんな財政再建策を提示するのか。「経済をよくして税収を増やす」は空論に近く、財政再建を可能にするほどの経済成長はまず期待できません。
そこで囁かれだしているのが悪魔のシナリオです。さきほどのコラムは「財政破綻による政府のデフォルト(債務不履行)やインフレによる金融資産の価値棄損は、ほぼ全額が高齢者の金融資産の価値の下落で負担される」と、指摘します。禁句だった「政府のデフォルト」の登場です。国債を直接、保有していなくても、高齢者が資産を預けてある金融機関、生損保は巨額の国債を運用しており、国債がデフォルトすると、損害は高齢者に回ってくることになるわけです。(つづく)
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