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2020-08-05 00:00
中国共産党中央政治局会議の動向等
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
1 はじめに
中国共産党は7月30日、習近平総書記が主宰した中央政治局全体会議を開き、概ね年1回開催の中央委員会総会、すなわち第19期中央委員会第5回総会(5中総会、中国語では「五中全会」)を10月に北京で開催することを決定した。同総会の議題は2021年から始まる「十四五」(第14次5か年計画 2025年まで)と、さらに2035年までの長期目標制定のための建議(提案)の策定とされた。以下、今回の政治局会議をめぐる注目点等を紹介したい。
2 二つの「100年」目標を提起
今回の政治局全体会議を報じた新華社通信は「第14次5か年計画の期間は、中国が小康社会を全面的に打ち立て、一番目の100年目標を実現した後に、この勢いに乗って社会主義近代国家を全面的に建設するという新たな道程を切り開き、2番目の100年奮闘目標に向けて進軍する最初の5年間である」と規定した。最初の100年目標は明年7月に予定される中国共産党創立100周年であり、次の100年目標とは2049年10月に予定される中華人民共和国建国100周年のことである。そして、2035年とは恐らく、二つの100年目標である2021年と2049年の中間点となる年であり、今後第14次5か年計画を含めて3つの5か年計画推進の到達年ともなり、これだけの長期構想を習近平指導部が意識していることが明らかになった。他方、懸念事項も山積しており、政治局会議は「当面の経済情勢は依然として複雑で不安定性と不確実性が高く、遭遇する問題の多くは中長期的なものである」と指摘し、「必ず持久戦という角度から(問題を)認識しなければならない」としたのである。これは指導部の認識が従来の短期的な成長(率)達成の重視から、中長期的な「持久戦」展開へ目線を移した証左なのか今後の政策動向が注目されよう。しかし、政治局会議の最後で示された具体的な要求は「COVIDー19」への恒常的な防疫活動、内需拡大と積極的な投資等であり目新しいものはなく、現下の洪水対処・救援活動も末項にすぎなかった。
3 中国人民解放軍建軍93周年との交差
7月30日、政治局全体会議を終了した習近平ら政治局委員25人は引き続き集団学習会に出席した。今回の学習テーマは「国防と軍近代化建設の推進」で「強国に強軍は必須であり、強軍無くして国家の安全保障は不可能である」と習近平は強調したのである。これは、8月1日の中国人民解放軍建軍93周年記念日を控えて習近平が「軍権」を内外に示そうとしたのかもしれない。例えば27日の拙稿で指摘したように、22日から吉林省を視察した習近平は四平の戦争記念館と長春の空軍航空大学を視察していた。29日には建軍記念日前に恒例の上将昇任式が行われ、許其亮中央軍事委員会副主席以下6人の軍人メンバー立会の下、習近平主席が徐忠波・ロケット軍政治委員(前聯勤保障部隊政治委員)に昇任命令状を手交した。30日の集団学習会を挟んで31日には「北斗3号」衛星システム開通式典が開かれ、習近平が開通を宣言した。同式典には李克強総理や韓正副総理ら政府要人も出席したが、中央軍事委員会の張又侠副主席(前装備発展部長)が党・政・軍からの祝電を披露し、許其亮副主席と同委員の李作成聯合参謀長も同席したことから、中国独自の「北斗」GPSシステムは軍民共用の衛星システムなのであろう。
4 おわりに
今回の政治局会議に先立つ7月27日、中国共産党中央政法委員会副書記を兼務する趙克志公安部長は、全国公安機関のVTC(ビデオテレビ会議)の席上、「国内外の敵対勢力による浸透・転覆・擾乱・破壊活動を厳格に予防し、かつこれら活動に徹底的に打撃を加え、テロ対策のための各種措置に手を抜いてはならない」と厳命した。先述した「軍権」の誇示とともに、内政(治安)上も中国の対応は万全のように思え、少なくとも6月以降の香港問題への関与や7月に顕著となった対米関係悪化から来る「バックファイア」(逆流)の影響は見えてこないのである。国際政治学の泰斗であるキッシンジャー博士や、現代中国論で恩師の故中嶋嶺雄先生(前国際教養大学学長、元東京外国語大学学長)が倦まず説かれた金言に「中国の政治は外部から操作(manipulate)出来ない」というものがあるが、浅学菲才の小生はいつもこの教えを心に銘記して忘れないようにしている。
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