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2020-07-30 00:00
ヨルダン西岸地域のいま
真田 幸光
大学教員
中東情勢は、未だに複雑であります。昨年、私がイスラエルを訪問した際、現場の市民達は、共存に向けて努力しているように見えましたが、政治はそうは簡単、単純ではないようです。こうした中、パレスチナ自治政府のシュタイエ首相は、「イスラエルが占領下に置くヨルダン川西岸の一部併合に踏み切った場合には、国際社会に対し、西岸などを領土とするパレスチナ国家を宣言し、国家承認を求める」と意思表明をしました。昨年以降、選挙のやり直しを繰り返し、やっと、連立政権を樹立したイスラエルのネタニヤフ首相はこの7月から、パレスチナが将来の国家領土と位置付ける西岸の一部併合に向けて法制化に着手していますが、併合の動きを今後、本格的に牽制したいシュタイエ首相は、「国際社会は併合か、国際法の正義か、どちらかを選ばなければならない」とイスラエルとの対立を、国際社会を巻き込みながら、行っていく意欲満々であります。
ところで、この、「ヨルダン川西岸をイスラエルへ併合」と言う案は、そもそも、アメリカの中東プランであり、これに対してのパレスチナ側から反対提案をシュタイエ首相は示そうとしています。前述したように、米国の後押しを受けた、イスラエル政府はヨルダン川西岸地帯を、自国領に併合する動きを本格化していますが、一方、パレスチナ自治政府は、「これはもはや戦争犯罪である」と抗議、アメリカの中東プランに乗じて計画を進めるイスラエルを相手にして、これに代わるべき反対提案として、「ヨルダン川西岸地区ではなく、現在、パレスチナ自治領に属する他の地区とイスラエル領とを、相互に交換の上、パレスチナを、主権を有し、独立した、且つ、独自の軍隊を持たない非軍事国家としての”パレスチナ国“として国際社会は承認するべきである」との声明を示しています。この案は、即ち、「領土の交換と言うのであれば、パレスチナはこれを受け入れる」ということを意味していると言えましょう。
そして、「これならイスラエルとの国境線を左程大きく変更する必要がない。我々パレスチナのこの提案は、既に、所謂、中東問題に関する4か国会議、即ち、アメリカ、ロシア、国連、ならびにEUで構成されるに提出済みである」とコメントしています。更に、アメリカ案によれば、「ユダヤ人が入植済みの地帯とヨルダン川西岸地区を、イスラエルに併合させると言うものであり、パレスチナは、経済的に重要な地域である、ヨルダン川西岸地区、並びに、現在、パエスチナ自治政府にとっての首都である東エレサレムを放棄しイスラエル側に渡してしまう結果となるのである」ということから、パレスチナとしては、絶対に容認できないとしています。
これに対して、国際社会、特にEUでは、トランプ大統領のこの案に対し、「この案は、国際法違反である」と反対していますが、代替案は示していません。しかし、ドイツ政府は、「この問題について仲介の労を取る用意ある」と伝えられていて、期待したいと思います。さて、昨年、イスラエル・パレスチナ問題で、仲介をしたいとしていた、我が国の宰相は如何なる姿勢を示すのでありましょうか?何もしないのでありましょうか?
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