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2020-07-30 00:00
(連載2)沖ノ鳥島近海での中国の調査について
緒方 林太郎
元衆議院議員
ただし、このような事実があるにもかかわらず、中国は日本の同意を取り付けずに調査をしています。これは日本として全く受け入れられないのですが、この中国による日本近海での海洋調査については日本外交の「隠された事実」があります。知っている人は非常に少ないです(理由は後述)。何故、私が知っているかというと担当だったからです。そして、何故、こうやって紹介しているかというと、この文書は秘密文書ではないので、存在を明らかにしても国家公務員法の秘密保持違反にならないからです。
国連海洋法条約上、この手の海洋調査については「6ヶ月前までに同意を求める」事が要件となっています。しかし、対中国では2001年、河野洋平外相時代に「海洋調査活動の相互事前通報の枠組みの実施のための口上書」というものを交わしていて、そこでは「2ヶ月前までに通報する」だけでOKとしています。通常ルールに比べると期間は短いし、通報だけでいいので日本の同意は不要です。この対中国での特別ルールが何故知られていないかというと、この口上書がウェブ上で一切公開されていないからです(なので、何処からもリンクが張れません。出て来るのは
外務省のリリース1枚
だけです。)。なので、普通に調べようとしても内容を知りようがありません。口上書の名称でGoogle検索をしても出て来るのは私の書き込みが大半です。しかし、繰り返しになりますが、この口上書は秘密文書ではありません。
ちょっと意地の悪い私は、これについて質問主意書を出しています(
質問
、
答弁
)。木で鼻をくくったような答弁が返ってきていますけど、これだけ重要な文書なのに誰も調べられない状態に置かれているというのは、とどのつまり「知られると都合が悪いから」です。幾つか都合の悪い所がありまして、まず、日中間で平等になっていないのです(非常に雑に言うと、中国が調査できる海域と日本が調査できる海域の表現振りに差があります)。しかも、東シナ海の事を(日本側文書でも)「東海」と呼んでいます。私は冗談で「この『東海』は『トンへ(韓国版の日本海)』とでも発音するのか?」と揶揄した事もあります。なお、日中漁業協定でも東シナ海の事を「東海」と記述しています。そういう不平等かつ大優遇の口上書があって、中国は調査をする2ヶ月前に「今度、この辺りで調査します」と連絡するだけでOKになっています。実は手続きに沿って中国が今回の海域で調査をすると通報して来たら、日本に断る権限は一切ありません。ここはあまり知られていない事です。あまり言いたくないのですが、口上書で合意した内容を踏まえれば「通報するかしないかだけだろ。別にそこまで問題にしなくてもいいじゃないか。」という感情を中国側に持たせているのかもしれません。ただ、中国は何の通報もしていないので日本として今回の調査は認められないとするのは当然です。
纏めると「中国は2ヶ月前までに『調査するからね』と連絡すれば良い事になっている。日本は中国の調査を拒否する事は出来ない。ただ、その連絡すらやってきていない。ただ、日本はそういう中国の主張を許さない材料をきちんと持っている。」という感じです。今、この件で世論が盛り上がっています。ともすれば扇情的になりがちなのですが、是非、こういった点を押さえた報道や議論を期待したいと思います。(おわり)
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