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2007-06-28 00:00
独ソによるポーランド分割の歴史的教訓
小山清二
特許庁・審判官
余り考えたくもないが、当方は、今や日本を超えた中国による多額の米国債保有の現実を前にして、米国は中国による米国債売却の恐怖に駆られながら、表面的には中国との対立を装いながらも、内実は中国との和解が進行しているのではないかと疑っている。実に、米国は知らず知らずの内に、中国に首根っこを押さえ付けられてしまっているのである。日米関係は戦後最大の良好さを保っているとは色んなところで聞かれるものだが、他方で、米中和解を示唆する事態は、随所で垣間見れる状況だ。こんな状況下では、対中関係はおろか、対北朝鮮関係でも日米安保条約の発動は有り得ないものと思われる。それどころか、日米安保条約は、中近東など世界的規模で発動されていく傾向にある。
そのようななかで、さる6月19日、参議院外交防衛委員会で、民主党の浅尾慶一郎議員が、米国海軍のキーティング提督が中国海軍のトップとの5月11日会談の中で、航空母艦を持つことの技術的な難しさを強調しつつ、「中国が望むなら建造を支援する」と発言した件について質問したところ、日本の外務大臣も防衛大臣も官房長官も、このキーティング発言について、全く知らなかった!!これは、日本の政府閣僚の情報音痴を示すと同時に、大変な失態だ。危機管理の無さを全世界にさらけ出したことを意味する。
確か米国は、これまで日本独自の空母や戦略ミサイル、核兵器、偵察衛星の製造、保有には反対してきたはずである。それなのに、中国の空母保有には協力するというのか。それは、一体何のための発言なのか。中国の空母が何を狙っているのかは、明らかであろう。台湾のみならず、日本本土や、日本のシーレーンに脅威を与えることである。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ならぬ「米国の本心見たり破れ核傘」とでも言うのだろうか。ここで想起される歴史の教訓は、独ソ不可侵条約の締結とその結果としてのポーランド分割である。表面的には相対立する国家間でも、利害得失が合致すれば何時でも手を握る事態が考えられる。平沼騏一郎内閣は「欧州の天地は複雑怪奇」との迷言を残して総辞職したが、キーティング発言に対する日本政府閣僚の対応ぶりを見れば、また同様の事態が起こらぬという保証はない。今度の場合は、分割されるのはポーランドではなくて、日本である。
日本人はお人好しで、馬鹿正直で、決して疑うことのない善良、信義に満ちた国民性であるが、言い換えれば、まさかの仮定を想定した戦略的思考がなく、固定的に考えやすい欠陥を有した国民性である。特に、国家の安全保障を周辺諸国の信頼に委ねた憲法の下に、自主防衛意志を放棄した現状は、危機管理意識もなく、国家戦略をも放棄した状態だ。ところで、仮に米中の一部勢力が結託して日本解体を策謀するとしても、米中の利害関係には複雑なものがあり、貿易問題や人権問題などで全体的な摩擦や対立が勝ってゆく可能性もある。そのような可能性を期待するものだ。しかし、日本として米中関係の行くえを注視する必要のあることには変わりはない。
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