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2007-06-28 00:00
米国で高まりつつある対中国強硬論をどう考えるか
須藤繁
シンクタンク研究員
中国により積極的に展開されているアフリカ資源外交に関して、筆者は5月31日付け本欄で「一国が経済成長を目指し、そのためのエネルギー資源を確保するために資源獲得競争に邁進せざるを得ないという事情は理解できないものではない。問題は、人権が抑圧され、あるいは開発独裁下にある国に、資源開発協力の名の下に、結果的に人権抑圧、開発独裁に加担することを、国際社会の一員としてそれを容認できるか否かということである」と論じたが、この筆者の立場はいまでも基本的に変わらない。今回改めて、本件を取り上げるのは、昨今中国のダルフール紛争への関与が米国において取り上げられる頻度が増し、一部に対中強硬論が高まりを見せているからである。
女優のミア・ファローは、スーダン政府がダルフール紛争をエスカレートさせるのを抑制するのに中国の影響力を利用するために、中国に圧力をかける方法としてオリンピックを梃子とするキャンペーンを進めている。また、民主党大統領候補にも北京オリンピック・ボイコットを提案する者もいるが、ミア・ファローのキャンペーンは、広く米国民の支持を集めるかもしれない。米国では、折りしも中国製ペットフード、飼料、医薬品の輸入を巡る問題が国民の大きな関心を集めているからである。
ところで、中国政府も対応を進めてはいる。北京オリンピック・ボイコットキャンペーンに対応すべく、4月にスーダンに特使を派遣し、また国連アフリカ連合軍への兵員派遣提案にも合意した。また、中国のアフリカ進出には負の側面のみがある訳ではない。国務省の中には、中国は道路・発電所建設、通信分野等インフラ開発において大きな役割を果たしていることを評価する関係者は多い。
結論的にいえば、筆者の立場は、人権問題への関与を監視し国際社会の圧力をかけ続けると共に、EITI(2002年9月ヨハネスブルグで開催された世界サミットで英国ブレア首相により提唱された「資源産業資金透明化プロジェクト:Extractive Industries Transparency Initiative」)等への参加を通じて、開発資金の透明性の確保を図ることが地道な対応策になるということである。ミア・ファローのキャンペーンは一定の成果を上げるかも知れない。しかし、オリンピック・ボイコット提案は、行き過ぎでないのかと考えるのである。
さて、もう一つ関連問題として、国防総省が創設する地域統合軍(アフリカ軍)の性格に関する議論がある。国防総省は2008年10月までに地域統合軍(アフリカ軍)を創設する方針である。同軍の運営に関しては、基地や常駐軍は置かず、司令部機能中心とし、また外交的機能を強化するため副司令官には国務省高官の就任が構想されている。アフリカ軍に関し、24日毎日新聞は、ヘンリー米国防筆頭副次官(政策担当)に対するインタビュー記事を掲載、「中国は経済問題を通じて一定の政治的影響力を行使している。アフリカ軍は中国監視を目的としている」と述べたことを紹介しているが、こうした監視体制の強化は、米国として当然の措置であると評価される。
同次官は、「アフリカ軍の創設はアフリカをよりよい地域にし、それによって米国や他の諸国が将来、共に利益を分かち合うことができるが、資源獲得における中国の進出はそれとは少し異なる」との警戒感を表明している。米国の警戒感を払拭するためにも、中国には人権問題の解決と開発資金の透明性確保を志向する政策の導入が期待される。
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