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2020-05-22 00:00
(連載1)アフター・コロナ、本当に変わるのか
岡本 裕明
海外事業経営者
最近、BCとACという表現を見かけます。Before Corona, After Coronaです。コロナの前後で社会や生き方、価値観、仕事の進め方などが変わると予想するオピニオンリーダーは多いようです。多くの経営者もそのような発信をしています。コロナが収まった時、我々の社会は本当に変わるのでしょうか、変わるとしたらどう変わるのでしょうか?
グローバル化への揺り戻しが起きています。これはコロナのはるか前からその傾向はありました。Gゼロの時代と言われ、トランプ大統領やフィリピンのドゥテルテ大統領が就任した時、世界の潮流は大きく変わりました。その以前には世界の工場としてグローバル化の枠組みの中にあった中国が経済成長に伴い、その枠から飛び出し、2014年には「一帯一路」なる広域経済構想をぶち上げ、グローバル化の均衡はバランスを失い始めていたと思います。更に欧州などでは移民、難民問題を端に各国で極右政党が台頭し、英国はEUを離脱する運命となりました。「仲良く手を取り合って」というのは欺瞞だったのでしょうか?
私は当時から国の成長力や歴史背景、宗教的支配などを考えれば政治色の強い「お友達意識」は長く維持できないし、時間とともに力関係や国同士の綱引きで総花的な外交や通商は進みにくくなると何度も指摘したはずです。政治力において地球儀ベースのお仲間意識がなぜ維持できないかといえば、主従関係ならまだしも対等な位置づけであればあるほど細かい点でぶつかり合うからであります。中国は世界の工場から経済的に成長し、ファーウェイなどの技術力はアメリカが意識せざるを得ない状況になったこと、そして多くの欧州諸国やアフリカ諸国は中国がばら撒く「からし入りの飴玉」に飛びつき、ようやく「甘くなかった」と気がつき始めたのです。コロナはその背中を押しただけ、ともいえます。
しかし、私は識者や経営者が言うほど世界が急激に変わるとは思っていません。上記のストーリーは政治的グローバリゼーションの話であってビジネスベースではグローバリゼーションは更に進むとみているからです。事実、通商貿易に的を絞ったTPP11は成立し、便益を享受しています。イアン・ブレマー氏は企業のサプライチェーンが自国に戻ると主張します。本当でしょうか?グローバル化は人、モノ、情報、マネーなどあらゆるものが地球儀ベースで飛び交うことで成り立ちます。今、コロナで人の移動は制約されています。しかし、モノも情報もマネーも普通に動いているのです。私はこれから国境をまたいだM&Aは急増するとみています。なぜならマネーの偏り、つまり強度な資本主義が確立されている現代社会においてマネーの弱肉強食は更に勢力を増すからです。(つづく)
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