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2020-05-19 00:00
(連載1)ポジショントークから読む資本主義の病
中村 仁
元全国紙記者
トランプ米大統領が珍しく正論を吐きました。「金持ちが相場について弱気な発言をしている時は、逆の方向に賭けているものだ。他の投資家の売りを誘い、下がったところで買いを入れる」。その通りです。著名投資家がわざわざ発言するは、相場を下げに誘導するためです。「世界恐慌以来の不況」(IMF専務理事)に入るのに、暴落した相場が半値戻しになるだけでも十分でしょう。それでも、トランプ氏はなお不満なのです。トランプ氏の著名投資家の手法に対する批判は正論であっても、コロナ後を迎える前から、コロナ直前までのバブルを再現したいかのような経済政策は間違いです。
上記の通り、著名投資家が弱気相場(下落)の予想を明らかにすれば、相場を動かす影響力が強いため、大統領選挙対策で株価回復を狙うトランプ氏は嫌がっています。なぜならば、トランプ氏は政権の成果を計る指標として、株価を重視しているからです。これは安倍首相も同じです。株価を経済の体温計に使い、バブルを好む政治家が多いということです。日経によると、この金持ちは「ジョージ・ソロスの右腕として活躍した著名投資家で億万長者のドラッケンミラー氏」(5/15)だそうです。ドラッケンミラー氏が「アメリカ経済がV字型の回復をするシナリオは空想」と吹いたから短気のトランプ氏は頭にきたのでしょう。
同じく世界的投資家のジム・ロジャーズ氏も辛辣なことを言っています。「連邦政府、FRBがなりふり構わぬ対策を打っている。それが次のバブルを生む可能性があり、大きな上げ相場がくるかもしれない。彼らは今回のコロナ騒動でさらなる量的緩和をし、大量のおカネをバラまこうとしている」と。同氏は、「人工的なバブルは再び暴落する。50~70%の値下がりが起きる。コロナによる実体経済の破綻で、金融システムの不安が必ず引き起こされる。中央銀行が無限に債務を増加(国債、株買いでマネー供給)させることはできない。いつの日か終わりがくる。次の危機は最悪の危機となる」とも。
その発言の真意は、「トランプ政権、FRBが最悪の危機のお膳立てをしてくれている」ということでしょう。大暴落で底を打つのを見極め、巨額の買いに転じ、50年に1回あるかないかの大勝負に出たい。大底で買いあさり、バブルの頂点で売れば、巨万の富が得られるからです。それまで持ちこたえられる富裕層はさらに富み、失業、倒産で苦しむ者はさらに困窮化します。企業間格差、国家間格差もさらに広がり、世界は安定を失ってしまいます。このような投資家たちは「世界の不安定化は望むところ。その方が商機は広がる」とまで考えていると思います。(つづく)
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