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2007-06-25 00:00
深刻化したパレスチナ紛争はあくまでも話し合いで解決すべき
青木茂
著述業
6月中旬に至りアッバス議長の下で中立派のフアヤッド氏を首班とする緊急事態内閣が発足し、パレスチナはファタハが優位を占める人口241万人のヨルダン川西岸とハマスが占領下においた人口142万人のガザに分裂した。これは1993年以来話し合いの基礎であったオスロ合意の前提条件が完全に失われてしまったことを意味し、かってない重大な局面である。米国、イスラエルはこの機会に穏健派であるアッバス議長のファタハと正常化の話し合いを促進し、同時にガザへの経済的圧力を加えハマスを孤立させたい考えであり、イスラエル政府の一部はガザの武力殲滅すら主張している。
他方イスラエルは、2006年1月以来凍結してきたパレスチナ向けの関税収入約8億ドルをアッバス政権に返還すると伝えられている。しかし、こうした措置はハマスの背後にいるイラン、イラクを刺激する惧れがある。また、米国、EU、国連とともに所謂「クアルテット」の一員であるロシアは、西岸、ガザの分立は認めず、あくまでも両者の話し合いでの解決を主張している。この地域に重大な関心を持つ中国も同様の主張を行っている。
そもそも今回の事態は2006年1月の選挙でハマスがパレスチナ国会で過半数以上の議席を獲得したことに由来する。ハマス関係者でもぜいぜい議席の30%程度と踏んでいたので、これは予想外の驚くべき勝利であった。他方、自由な選挙が穏健な結果をもたらすと楽観していた米国にとっても意外な結果であった。このように全ての関係者にとって思いもよらぬ選挙結果は、その後歩み寄りの努力がなされることがなく、今日まで続いてきたのである。即ち、ハマスはイスラエルの存在を否認したままであり、過去のパレスチナ自治政府とイスラエルとの合意を無視するとの態度であり、米国、イスラエルもテロ集団と考えるハマスを否認する態度を変えず、経済的な締め付けを強化したのである。
ガザが孤立したままではハマスを支援するイラン、シリアが今後何の行動に出ないと言う保証はなく、放置すればテロの激化、武力闘争のエスカレートなどパレスチナ情勢は更に悪化の一途を辿る懸念が大である。かかる事態を防ぐにもハマスとの話し合いの道を拓くことが肝要である。「クアルテット」は、アラブ連盟、アラブ諸国と協力してパレスチナの一層の情勢の悪化を防ぎ、ハマスを排除することなく当事者間に対話の道を開くように努力すべきである。
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