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2020-05-07 00:00
最近の習近平指導部への試論十論
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
1 はじめに
メーデーに伴う長期休暇を終えた中国は5月6日、「最高意思決定機関」である中国共産党の中央政治局常務委員会会議を開催した。同会議は休暇前の4月29日に開催されて以来のことであり、主宰者の習近平党総書記の地方視察による閉会を除けば、概ね毎週水曜日に定例開会されている。今回の常務委員会会議の内容等、注目点を以下紹介したい。
2 引き続き湖北省を重視
5月6日晩の新華社の報道によると、中国共産党の中央政治局常務委員会は、4月27日に撤収した中央指導組(組長:孫春蘭副総理)の防疫活動報告を聴取し、恒常的な防疫メカニズム整備について研究したという。習近平党総書記は「中央指導組の派遣決定は、防疫活動に関する党中央の決定を督促し、第一線の防疫活動に対する指導を強化するものだった」とし、「中央指導組は湖北省、武漢市の人民と共に戦い、特に根本的な防疫、患者救済、物資保障の面を重視して活動し、人民戦争、全体戦争、阻止戦争勝利に重要な貢献を行った」と指摘し、3か月にわたる中央指導組の活動を賞賛した。しかし、続けて習総書記は「現在、海外では疾病が拡散・蔓延する勢いはなんら有効に抑えられておらず、中国の個別地域には集中的な疫病発生もあり、疾病状況は依然として不確実性が大きい」と厳しい認識を示し、「湖北省の防疫活動が応急的なものから恒常的なものへ転換したとはいえ、これは決して活動を緩めたり、一息つくことではない」と現地の湖北省や中央の関連部門に釘を刺し、念を押したのだ。その意味するものは何であったか。
3 湖北省へ「連絡組」派遣
上記の政治局常務委員会会議2日前の5月4日、党中央の承認によって国務院から「連絡組」が派遣され湖北省武漢市に到着した。これは、前週の4月27日に中央指導組が撤収してからまだ1週間後の措置であった。同連絡組は丁向陽国務院副秘書長が組長、ウ学軍国家衛生健康委員会副主任が副組長として率いる組織であり、副総理(兼中央政治局委員)が率いた中央指導組に比べると政治レベルは低いが、より実務的な構成になったと言える。しかし、現場の応勇湖北省党委員会書記、王暁東省長(兼党委員会副書記)は連絡組一行を歓待して調整会議を行った。同会議の席上、丁向陽組長は、連絡組の職責が「中央指導組」同様、各種防疫措置実施の督促であり、特にコミュニティの防疫活動、PCR検査・抗体検査範囲の拡大、無症状感染者・治癒患者への対応、PTSD(中国語:病後総合症)対策を重視すると明言した。そして翌5日に連絡組は、湖北省の王賀勝衛生健康委員会主任(前国家衛生健康委員会副主任)、武漢市の王忠林党委員会書記、周先旺市長を引き連れて市内の学校、公園、福祉施設、地下鉄駅、市場、医院など重点場所の実地視察を行った。先述した政治局常務委員会議は、今回の先行的、かつ継続的な派遣措置を追認しただけであった。
4 中国全土の緊急対応レベルの現状
5月2日、湖北省の「COVID-19」への緊急対応レベルが1級(特別重大レベル)から2級(重大レベル)へ引き下げられ、1月末以来全土にわたって1級状態にあった中国の警戒態勢が逐次緩和されていることが明らかになった。しかし、これは緊急警報が完全に解除されたものではない。依然として2級状態にあるのが北京市、天津市、河北省、上海市、湖北省、広東省、チベット自治区の一部、寧夏回族自治区の8省市・自治区であり、北京、天津、河北のレベルが下がったのはメーデー休暇前日の4月30日にすぎない。4級(普通)状態にあるのは内陸部の青海省、新疆ウイグル自治区だけで、他の黒龍江省や重慶市、広西壮族自治区など21省市・自治区はまだ3級(低レベル)状態にある。したがって、こうした疾病状況等によって不安定な社会治安対策を主管する中国共産党の中央政法委員会メンバーの活動も依然として活発である。例えば4月28日から29日までの間、郭声コン(王ヘンに昆)書記(前公安部長)は、警戒レベル引き下げ直前の河北省を視察し、同行した王東峰党委員会書記らに法治の徹底を訴えた。河北省は首都北京に隣接した緊要な位置にあり、習近平党総書記が打ち出した「ミレニアムプロジェクト」(千年大計)である「雄安新区」開発地域が存在する省である。また、5月4日には趙克志副書記(兼公安部長)が公安部党委員会拡大会議を開催し、5月22日開幕が決定された全国人民代表大会(全人代)会議の安全確保・安定維持を最優先の大事にすると強調したことから考えると、郭書記の河北省視察も全人代会議という政治イベント実行のための環境整備であろう。
5 おわりに
5月1日の拙稿で、76日間の封鎖状態に耐えた湖北省には「飴」(経済振興策)が差し出されたと指摘したが、やはり甘い見方であった。習近平指導部は「習近平一派」で固めた湖北省指導部にも「鞭」を入れることを忘れていないのだ。その理由は、国内的には『武漢日記』(方方著)や『武漢封城日記』(郭晶著)などSNS上に掲載された武漢市民の日記等出版物の取り締まりやネット対策、対外的には欧米諸国から「ウイルス漏洩」疑惑が提起されている「中国科学院武漢ウイルス研究所」の管理などが考えられるが、細部は後日稿を改めて述べたい。
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