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2020-04-28 00:00
北マケドニアのEU加盟への道程
真田 幸光
大学教員
私が大学受験をした頃、世界地理の勉強をした際に、「ユーゴスラビア」と言う国があったことを覚えています。また、カリスマ性の高い独裁者として有名な、「チトー大統領」がいた国も、このユーゴスラビアでありました。ユーゴスラビアという国はまた、「七つの国境、六つの国、五つの民族、四つの言葉、三つの宗教、二つの文字、一つの国家」 と呼ばれるほどの多様性を見せた国でもありました。更に、ユーゴスラビアは、社会主義国でありながらソビエト連邦陣営側につかない、「非同盟中立」を掲げ、経済でも自主管理体制を行い西側・東側諸国両方と積極的に交流を行うなど、冷戦下では「開放された社会主義国」として資本主義国家、更に世界の社会主義運動家から一目置かれる存在になっていたのであります。
しかし、そのユーゴスラビアは分裂してしまいました。そして、分裂した国の中に、「北マケドニア」と言う国が今、存在しています。北マケドニアでは、憲法に規定される公用語はマケドニア語のみでありますが、地方自治体においては、少数言語の話者が人口の2割を超える場合、その言語は自治体に於いてマケドニア語とともに公用語の地位を認められることになっており、これによって、自治体によってはマケドニア語以外の言語が公用語となっているところもあります。それだけ複雑な国とも言える訳です。そして、北マケドニア、正式には、「北マケドニア共和国」は、東ヨーロッパのバルカン半島に位置する共和国であります。前身は上述した通り、ユーゴスラビア連邦の構成国の1つであり、南はギリシャ、東はブルガリア、西はアルバニア、北はセルビアおよびコソボと、四方を外国に囲まれた内陸国で、人口は200万人程度の極貧国と見做されています。
北マケドニア共和国は、地理的にはマケドニアと呼ばれてきた地域の北西部にあり、現在ではマケドニア地域全体の約4割を占めています。因みに、残りの約5割はギリシャに、約1割はブルガリアに属しています。また歴史上、北マケドニア共和国の多数民族はマケドニア人と自称・他称されますが、彼らはスラヴ語の話し手で南スラヴ人の一派であり、ギリシャ系の言語を話していたと考えられる古代マケドニア王国の人々とは直接の連続性はないとされています。これらの理由から、1991年の独立当初の国名(マケドニア共和国)を巡り、ギリシャとの間で後述するような国名論争(マケドニア呼称問題)が生じていました。尚、マケドニア地域は、かの有名なアレキサンダー大王の出身地でもあります。
さて、そんな北マケドニアは今、欧州連合(EU)加盟を目指しています。そしてEUは、各国閣僚テレビ会議を行い、西バルカンの北マケドニア(旧マケドニア)、アルバニア両国とのEU加盟交渉開始で合意し、本年3月26日のテレビ首脳会議を経て正式決定しました。両国の加盟交渉入りはフランスなどの反対で2018年6月以降、3度にわたり先送りされてきました。拡大推進派と慎重派の亀裂が広がっていましたが、今般、加盟手続きを厳格化し、アルバニアには司法改革などで新たな条件を課すことで折り合いました。ただ、実際の交渉開始時期は未定であり、北マケドニアは年内開始の期待は残っているようです。さて、北マケドニアは、果たしてEU加盟がなるでしょうか?EUは英国が離脱し、加盟国数が27カ国に減った分を再び増やすことにするのでしょうか?
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