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2020-04-12 00:00
(連載1)自衛隊における統合機動司令部の常設
佐藤 有一
軍事評論家
日本は周囲を海に囲まれ、長い海岸線と数多くの島を持っています。領海と排他的経済水域(EEZ)の面積が世界第6位となる海洋国家です。従って日本が防衛すべき脅威はすべて日本の周囲の海からやってくるのです。領海の守りは海上自衛隊の役割です。領空は航空自衛隊が守らなければなりません。この海空の防衛は海・空自衛隊がそれぞれ単独の指令系統で部隊を運用することで完遂できると思います。これに対して領土の防衛は、内陸部においては陸上自衛隊が単独で部隊を展開して防衛できるでしょうが、海岸域と島嶼部の防衛においては陸海空自衛隊がそれぞれ必要とされる部隊を互いに提供し合って統合機動部隊を編成することが不可欠となります。従って、陸海空自衛隊がこの目的のために選別した部隊を統合して、一元的に統制指揮する統合機動司令部が必要になります。我々の国土である離島を自らの領土と一方的に主張して、そこを占拠したり領海への侵入を頻繁に繰り返している国が存在しているのが現実です。これに対処するために、自衛隊が統合機動部隊を持つことは日本の安全保障を確実にするために有効であるはずです。統合機動部隊を編成して領土を断固防衛するという決意を諸外国に示すこと自体が抑止力となり、戦争を未然に防ぐことに役立つのです。
日本の海岸域と島嶼部への侵攻は、正規軍による海上優勢と航空優勢の奪取とその後の侵攻部隊による上陸侵攻・占領であるとは限りません。漁民に偽装した民兵あるいは特殊部隊の工作員が前触れもなく離島に上陸して、その土地を自国の領土であると宣言し、それを既成事実化しようと行動することが想定されます。いわゆるグレーゾーン事態であり、自衛隊が出動すべきか否か判断が難しい状況となります。
このような場合、敵国(侵攻国)は占領した土地を自国の領土であると主張することによって事態を激化させることが侵攻の目的なのです。この時点での自衛隊の出動は敵国側からすれば、自国の軍隊をその地域に展開する名目として利用できることになります。本格的な戦闘に発展する覚悟がなければ、自衛隊はグレーゾーン事態の舞台となっている離島の奪取に直接行動してはいけません。この場合は海上保安庁と警察が対処するべきでしょう。このようなグレーゾーン事態であっても、日本政府は「敵国との外交交渉・国連への提訴・日米安保にもとずく米国との交渉・国際社会への訴え」などを速やかに展開して、日本の立場が国際的に優位になるように外交政治を進めなければなりません。この時点において、専守防衛にもとずいた自制的な対応であるにしても、統合機動部隊を出動させる準備ができていることが日本を防衛する意思を世界に示すことになり、それによって日本が諸外国の支持を得ることにつながります。
自衛隊はこのようなグレーゾーン事態で直接行動しない時点であっても、敵国を牽制するために統合機動部隊を侵攻された離島の周辺に展開しておく必要性があります。当然敵国側もその海域に軍隊を配備してくるはずです。自衛隊はこの敵国側の動きに呼応して、統合化した指令のもとに艦艇・航空機をすみやかに展開すべきです。この海域の海上優勢と航空優勢を確保して敵国の軍隊の行動を牽制し続けることができなければなりません。警察力によっては対処できなくなった時点で、自衛隊が敵国側の装備と戦闘力に比例した限定的で微妙な対応をすることになります。海上自衛隊の護衛艦・潜水艦による海上優勢の確保、航空自衛隊の早期警戒機・戦闘機による航空優勢の確保と支援作戦は離島の奪還作戦と呼応して同時に実施されなければなりません。しかしながら、陸海空の装備・兵力を統合化せずに、その時点で寄せ集めただけの部隊の集団では、このような機微にふれる作戦を実施できるとは思えません。(つづく)
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