ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
本文を修正後、投稿パスワードを入力し、「確認画面を表示する」ボタンをクリックして下さい。
2020-03-29 00:00
最近の習近平指導部への試論再論
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
1 はじめに
3月25日掲載の拙稿で指摘したとおり、中国共産党は同日、習近平総書記が政治局常務委員会会議を主宰し、その議論に基づき27日に政治局全体会議を開いて新たな政策措置を打ち出した。また、中央疫情対応工作指導小組(組長:李克強総理)も、26日に第20回会議を開催しており、注目点を以下紹介したい。
2 「両手で掴む」政策の徹底
3月27日に開かれた政治局全体会議は2月21日以来の開催であり、従来の防疫活動・経済振興策の徹底があらためて主張されると同時に、「国内外で起きている新たな重大な変化」すなわち海外における疾病の拡散・蔓延、これに伴った世界経済貿易への影響が強調された。具体的に言えば、国外からの疾病流入・国内での疾病再燃防止であり、今後の経済発展、特に産業網復興への対策であった。また、政治局会議では、2月以来強調されている「脱貧」対象地域の貧困脱却、その成果として2020年末までの「小康」社会実現も主張された。例えば防疫活動と経済対策、国内措置と対外開放・協力、経済活性化と貧困対策等々、中国は従来「両手で掴む」政策を遂行、徹底してきており、どちらか一方に偏った「片手落ち」対策は許されないと言える。
3 最近の中央疫情対応工作指導小組の活動
中国の防疫活動の「司令塔」と言える同小組は1月26日の初会議以来、3月26日現在20回の会議を重ねてきた。会議の実態を伝える「中国政府ネット」は最近、組長の李克強総理の発言を重点的に伝えている。例えば23日の第19回会議で李総理は、中国全土の疫情好転を認めながらも「(鄧小平が主張した)実事求是こそ防疫活動の指針であり、疾病を発見したら真っ先に精確に対処し、疾病と伝染場所を有効に抑えなければならない」とし、「公開透明性こそ疾病の発見・報告の指針で、いかなる事象であれ虚偽の報告や報告の漏れは許されない」と強調した。さらに、26日の第20回会議で李総理は、一部の海外報道にある中国の「無症状感染者」の取り扱いについて「当初、我々は症状のある感染者、特に重症・危篤の患者を集中して治療した」と認め「今後は無症状患者への治療という人民大衆が日々関心を持つ問題を大いに重視しなければならない」と指摘したのである。このように序列「ナンバー2」李克強の存在感もフレームアップされている。
4 社会治安対策の徹底等
3月24日、全国政法系統部門テレビ電話会議が開催され、郭声コン(王へんに昆)中国共産党中央政法委員会書記(兼政治局委員、前公安部長)は「常に薄氷を踏むが如き憂患意識を持って国内外の防疫情勢の段階的な変化に対し、政法活動を先行的かつ重点的に行い、防疫活動と社会治安において今後萌芽となり、一定の傾向がある問題を研究し、適時適切に正確な施策を採択しなければならない」と強調し、あらためて全国の司法・公安関係従事者に発破をかけた。中国における疫情鎮静化に伴う湖北省内の武漢市以外の都市の封鎖解除(25日)、4月8日にも予定されている武漢市の封鎖解除を前にしての社会治安対策の徹底でありながら「憂患」危機意識発揚の意図は何であろうか。恐らく将来、首都の北京市や上海市への疾病の逆流・再燃への懸念であろう。こうした流れから2月13日の人事異動(応勇の湖北省党委員会書記就任)以来、空席であった上海市長の代理(同副市長)としてキョウ(龍の下に共)正(前山東省省長)が就任した(24日)。前任の応勇、新任のキョウ正は両者、習近平がかつてトップ(党委員会書記)を務めた浙江省勤務経験があることから「習近平一派」と見なされ、習近平指導部の安定強化が図られている。
5 おわりに
3月26日にはG20首脳のVTC(ビデオテレビ会議)、翌27日には米中首脳電話会談が行われた。恐らく25日水曜日の党政治局常務委員会会議では、習近平の対応も議論されたであろう。習の発言の基調はCOVID-19に対する国際協力の強化と各国との連携維持であった。そして、特に対米関係について習は、トランプ大統領に対し「防疫活動で団結しなければならない」と述べ「現在の米中関係は大事な瀬戸際にある。両国が手を結べば利益になるが戦えば共に傷付く。協力こそ唯一の正しい選択である」と強調したのだ。しかし、3月28日の読売新聞朝刊は「新型コロナ 中国の対応は模範にはならぬ」と題する社説を掲げ「(中国)共産党政権は対策の成果を誇示するが、模範とするわけにはいかない」と主張した。国情・国力が異なるのであるから「模範」にはならないだろうが「参考」や「教訓」にはなるであろう。また、一部のメディアが煽るような「世界の敵」は習近平ら中国共産党指導部ではなく「COVID-19」新型コロナである。この点、「百家争鳴」欄に掲載された加藤隆則教授の論稿に大いに啓発されたことを付記したい。
投稿パスワード
本人確認のため投稿時のパスワードを入力して下さい。
パスワードをお忘れの方は
こちら
からお問い合わせください
確認画面を表示する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム