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2020-02-20 00:00
(連載1)BREXIT後の貿易交渉、どうなるのか
緒方 林太郎
元衆議院議員
形式上、BREXITは成立しました。実質的にはこれから年末までに行われる貿易交渉によって完了します。この貿易交渉について思う事を書いておきます。ただ、分かりやすく説明するために、一部正確性を脇に置いている部分がある事をご理解ください。まず、通商の世界では「みんな平等」が基本です。あなたに関税下げたら、すべての人に平等に下げますという事です。これを①最恵国待遇と言います。これには例外があります。お互いに国境の垣根(関税)を取り払う所まで自由化するのであれば、「みんな平等」じゃなくてもいいよという事です。これは2パターンありまして、②自由貿易地域、③関税同盟です。②は「お互いの貿易で垣根を取り払う」、③は「お互いの貿易で垣根を取り払い、かつ、第三国に対しても歩調を合わせる」という事です。なお、TPPを始めとする日本が締結しているFTA/EPAはすべて②です。そして、今のEUが③です。
EUがBREXITを望んだのは、③である事によって、(ア)移民が来たりするのが嫌だ、(イ)制度の調和を要求されるのが嫌だ、(ウ)第三国との関係が制約されるのが嫌だ、という理由でした。そして、英国は②の関係に移る事を志向しています。ただ、完全に②になってしまうと、英国はとても損をします。大きいものを幾つか挙げておくと、「原産地規則」や「金融サービスのシングル・パスポート」みたいなものがあります。
英国で部品を作り、大陸側EUで完成品にして日本に輸出する商品があるとしましょう。英国がEU加盟しているのであれば、日・EUのEPAによって関税はゼロです。これはEU内で原産地規則が統一されているからです。②になると、この構造が壊れる可能性があります。英国で作った部品は、EUの外で作ったものですから、EU内の原産地規則が適用されません。なので、もしかしたらEUから日本に輸出する時に、英国産部品の比率が高いとEU製品とは見なしてもらえずに、日本に輸出する時に関税がゼロにならない可能性があります。面でやる自由貿易協定を切り刻んでしまうと、こういう事が起きるのです(TPPと日米貿易協定の関係に似ています)。結果として、英国から産業が出ていくという事になりかねません。
また、EUでは、何処か一つの国で金融業の免許を取ると他の国でも営業ができるというシングル・パスポートの仕組みがあります。ただ、これも英国がEUから外れると、シングル・パスポートの適用が無くなるという事になります。日本の金融機関はロンドンのシティで免許を取っている事が多いのですが、この適用が無くなる事を想定すれば、フランクフルトあたりに逃げ出したくなります。(つづく)
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