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2020-02-12 00:00
(連載2)かなり奇妙な米弾劾裁制度
中村 仁
元全国紙記者
米連邦法によると、「外国勢力に選挙応援を求めてはならない」とあります。ウクライナ疑惑とは「トランプ氏が20年の大統領選挙で優位に立つために、バイデン大統領候補(民主)の息子による不正行為があったかどうか調査してほしい」と、トランプ氏が相手国の大統領に依頼したか否かの問題です。この疑惑をめぐり、下院が弾劾訴追決議では、「権力の乱用」(個人的な政治的利益のために、外国政圧力)」と「議事妨害」」(証人に対する圧力、関連書類の提出拒否)をにあたり、法の支配に反する行為、憲法に対する脅威となると、批判しています。疑惑が事実なら、有罪でしょうか。
「大統領、副大統領、すべての文官は反逆罪、収賄罪、その他で弾劾され、有罪の判決を受けたら職を免じられる」と、合衆国憲法第2条にあるので「法の支配」は守っているという解釈でしょうか。米国憲法に弾劾制度が導入された当時は、大統領の権限が強すぎ、それを拘束するために、議会が裁判を経て罷免ができるようにしようと考えたのでしょう。今は、優位に立つ与党が大統領を守れるかどうに焦点が移ってしまっていますね。事実、今の共和党は「トランプ党」といわれるように、党派色が極めて強い。クリントン氏の弾劾裁判(ホワイトハウスの実習生徒との性的関係)、ニクソン氏のウォーターゲート事件でも、党派で議会の投票が左右されました。つまり、実際に行われた過去の例はみな、「利害関係者が陪審員」というゆがんだ裁判だということです。
「政治的部族主義」という言葉が登場しています。社会が政治的に分断され、あたかも部族のような社会の単位が生まれ、融和することはないとの主張です。強固な「トランプ部族」が共和党議員であり、その上院の構成員が陪審員となり、「酋長」の法的責任を裁く。民主党議員も陪審員になっているにしても、数が足りません。
「大統領が有罪か、無罪か」を、議員が陪審員になる弾劾裁判で扱うのは、「法の支配」という法体系の基本原理に反するのではないでしょうか。「法の支配」とは、「国民は適正、公平、合理的な法によってのみ支配される」という概念です。そのことを日本のメディアはまず、触れません。議会の駆け引き、裁判の行方の記事ばかりで、弾劾裁判の問題点を指摘しようとしていない。日本のメディアは、現地(米国)のメディアの論調を下敷きしていますから、米国でも、そうした問題意識はあまりないのでしょうか。(おわり)
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