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2020-02-05 00:00
(連載1)日中「5つ目の文書」への流れを紐解く
緒方 林太郎
元衆議院議員
習近平主席の国賓訪問に際して、「5つ目の文書」を作る事が話題になっています。日中関係では、節目節目で文書を作成しています。「日中共同声明」「日中平和友好条約」「平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言」「『戦略的互恵関係』の包括的推進に関する日中共同声明」と、これまで4つあったのですが、5つ目が検討されているという事です。過去の文書を振り返っておくことは重要だと思いますので、書き連ねたいと思います。
【①日中共同声明(1972年)】
は、田中角栄総理大臣による日中国交正常化の時の文書です。基本中の基本とされています。この文書を正しく理解するには、当時の条約課長であった
栗山尚一元外務次官の論稿
を読まないと分かりません。重要なのは、「中華人民共和国は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを表明。日本は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重」するという部分。非常に雑に言うと、「日本はサンフランシスコ平和条約で台湾を放棄した。その後の台湾の法的地位については立ち入らない」という事です。文書をよく読むと、何処にも「台湾は中国の一部だ」と認めた部分はありません。声明全体として、日中関係を切り開くという意味合いが強く、まだ、毒々しい部分はありません。日中それぞれの知性を駆使した文書だと思います。
【②日中平和友好条約(1978年)】
は、上記の声明で国交正常化を果たした後、平和友好条約でそれを確定させます。この条約については、日中間と言うよりも、当時の中ソ関係が悪化していた事に伴う問題の方が大きかったです。いわゆる「覇権条項」問題です。国際法のプロである小和田恆元外務次官(当時、総理秘書官)が活躍されました。第二条に「両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。」とありますね。これについて、ソ連が「この覇権を確立しようとする国とはうちの事か?」と噛み付いてきたのです。
しかし、①の声明を見ていただければ分かりますが、6年前の国交正常化の段階でもほぼ同じ事を表明しているのですね。その時にはソ連は何も言いませんでしたが、国際情勢の変化により、②の条約で同じ事を言っても「俺に対する当て付けか?」と噛み付いてきました。解決策は、第四条の「この条約は、第三国との関係に関する各締約国の立場に影響を及ぼすものではない。」というものです。これ自体も、①の声明の中にあるのですけどね。ただ、それでもソ連はこの条約に対してブーブー言っていました。学べば学ぶほど、この条約は「なんか、変な所に波及して不幸だった。」というふうに思わされます。(つづく)
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