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2020-02-01 00:00
(連載2)米・イラン対立とアフガニスタン和平のゆくえ
武田 悠基
日本国際フォーラム研究員
話を戻すとして、アフガニスタン情勢には、希望がないわけではない。なにより米国と反政府組織タリバンの和平交渉には、目下、この約20年弱の過程において、最も前進の兆しがあると見られている。これまで「アフガニスタン人主導の、アフガニスタン人による和平交渉」を大前提としてきたアフガニスタン政府、有力者らも、米国の和平交渉推進に初めて建設的に関与していく姿勢が見られる。アフガニスタンはこれから、「移行期正義」について真に取り組んでいかなくてはならないだろう。
これまでは、(膠着する)和平プロセスと、地域的に相互依存関係を深めようとする経済・インフラ政策は――目指すところは同じかもしれないが――別々に進められてきた。イランの経済状況悪化により、帰還する国民の数が増加していることから、国内経済の安定は、脆弱な同国の再建プロセス、脆弱な帰還民の保護、ひいては地域情勢にとってますます重要な懸案事項になってくる。
いずれにせよ、ただでさえ部族間の分裂が危惧されるアフガニスタンに、「残った」国民と、「避難せざるを得なかった」国民の間に差別が生まれないよう、今後確実な一歩を踏み出すことが何より求められる。そのためには、和平が先か、経済が先か、ではなく、両者のバランスを取りながら「車の両輪」として進めることこそが何よりも必要である。アフガニスタンの国家再建プロセスは、いわゆる「移行の十年」(2005年〜2014年)を経て、「変革の十年」(2015年〜2024年)も折り返し地点に来ている。つまり、2024年にかけて、外国からの援助がひと段落することになっており、薄氷のように脆弱な現状において、アフガニスタンには焦りが出かねない。
目下の和平プロセスの進展を契機に、「アフガニスタン人主導の、アフガニスタン人による」和解および国家再建を離陸させられるよう、最後のひと踏ん張りが求められるところである。そのためには、今こそアフガニスタン政府と国際社会が、2012年の「アフガニスタンに関する東京会合」で確認された「東京フレームワーク」の理念を思起し、それぞれの役割において協働することが不可欠である。そうすることが双方の「援助依存」、「援助疲れ」から脱する唯一の道である。
ともあれアフガニスタンは、米・イラン対立に見られる地域情勢の不安定化、難民の帰還、米・タリバン和平交渉の先行き不安という、新たな多面的挑戦に直面している。そのなかで、同国には、国内状況の改善と地域情勢の緊張緩和に少しでも資するためにも、中長期的な「大きな絵」を描くことが求められる。日本としても米国との同盟関係を基軸とする一方、長年、イランと独自の友好関係を維持してきたという立ち位置の優位性を活かし、そうしたアフガニスタンの取組を支援するとともに、この地域の緊張緩和に向けた日本の貢献が、特にアフガニスタンの「平和を知らない若年世代」に平和をもたらすよう、願ってやまない。(おわり)
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