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2020-01-31 00:00
(連載1)米・イラン対立とアフガニスタン和平のゆくえ
武田 悠基
日本国際フォーラム研究員
2020年の国際情勢は、米国とイランの対立が一時、「戦争一歩手前か」という声が出るほどの緊張の高まりとともに始まった。日本では米・イランの開戦可能性について意見が分かれたが、いずれにせよイラン周辺諸国に少なからず緊張が走ったことは事実である。そのなかで、ひときわ危機感を募らせたのは、イランに隣接するアフガニスタンである。
アフガニスタンにとって、イランは地域大国である上に、言語も自国とほぼ同じであるので、歴史的にも少なからずその影響下にあり、地政学上の警戒心を維持している。また、アフガニスタンは、自国の体制が脆弱である上、多くのアフガン人がイランに移民・難民として在留している。他方、アフガニスタンには米軍が既に18年を超えて駐留し、大規模な軍事作戦を継続している。その点、アフガニスタンは、イランにとっては気の休まらない存在である。
このように米・イラン両国の勢力の狭間におかれたアフガニスタンであるが、今般の米・イラン間の緊張の高まりを受け、ガニ・アフガニスタン大統領は早々に「自国土を、いかなる他国への攻撃始点にもさせない」と表明した。アフガニスタン政府が、地域情勢をめぐり自国の立場を表明することはきわめて異例のことである。というのも、アフガニスタンにとって、米国との関係は文字通り死活的に重要だからである。2014年、ガニ現大統領が就任して早速着手したことの一つは、前政権で国論を二分した、米国との二国間安全保障協定(BSA)の締結であった。両国軍によるアフガニスタンでの共同治安維持活動は、もはや同盟関係に近い。それにもかかわらず、今回の米・イラン対立のなかで、アフガニスタンが、米国支持一色とならなかったのは、米・イラン対立がこれ以上、自国に悪影響を及ぼすことは受け入れられないという、同国の強い意向の表れであろう。
なにしろ、イラン情勢は、アフガニスタンに直接的な影響を及ぼしている。2019年夏頃から、国連の対イラン経済制裁や、特に米国との対立がエスカレートするにつれ、イランの経済状況が悪化し、同国に在留していたアフガン人移民・難民の帰国者数が増えている、という報道が見られるようになった。安定しないアフガニスタン情勢の中、こうした動きがみられること自体、大変珍しい。アフガン人移民・難民問題は、一世代を超えて続く同国内戦状態と同じくらい古く難しい課題である。また、彼らの多くは隣国のイランやパキスタンに逃れたわけだが、その他にも、欧州や米国、豪州に渡った者も少なくない。それぞれの地では比較的大きなアフガン・コミュニティーが形成されている。
他方、テロが頻発する中、身の危険を感じて国内避難民(IDP)となり、生活の安寧を望めない人々もいる。国際社会の支援の下、アフガン難民の保護や帰還事業も進められてきているが、アフガニスタン情勢が劇的に改善されない限り、事態の根本的な打開は難しいであろうし、完全解決というものはまず不可能である。ちなみに2018年に日本が受け入れた難民のうち、出身国別で最大であったのは、アフガニスタン人(8人)であった。昨年、日本は出入国管理分野の法改正により体制強化を行ったが、今年、東京オリンピック・パラリンピックが開催されることもあり、今後、海外からの移民・難民・渡航者に関し対応する必要が、増えることはあっても減ることはないであろう。(つづく)
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