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2020-01-09 00:00
(連載1)予算案の偽装で財政危機の危機感が後退
中村 仁
元全国紙記者
またまた過去最大です。103兆円という巨額の来年度予算案が決まりました。主要国の中で最悪の財政状態をいつまで続けるつもりなのかと、多くの識者、メディアの大半が懸念しています。それなのに国民に危機感が高まらないのは、予算案に多くの偽装がなされ、危機が隠されているからです。史上最長、4選もあり得る安倍政権と言われるのですから、財政の実態を率直に示し、「国民に痛みをお願いしたい」と訴えるのが筋です。やっていることはその逆です。「経済再生と財政健全化の両立」「消費者物価の2%上昇の実現でデフレ脱却」「国民総生産(GDP)600兆円を達成」「原発比率20-22%達成(2030年)」など、政権の主要目標はどれも現実的ではなくなりました。特に年末に決まった国家予算案は偽装の手口が見え透いています。
偽装1。安倍首相、麻生財相がいう「経済再生と財政健全化の両立(25年に基礎的財政収支の黒字化)」は口先だけの偽装でしょう。目標達成年度を5年も先のばしています。経済再生に重点を置いても、歳出ばかり膨張し財政再建は遠のいています。財政刺激の効果は一過性で、過去20年、国債残高は膨張を続けています。「財政健全化」は唱えているだけのようです。
偽装2。高めに経済成長率を設定しており、税収も増えるから財政赤字を減らせるという理屈です。政府は実質成長率を1・4%(19年度は0・9%)としているのに対し、民間予想は0・5%と低いことを無視しています。税収が増えるというカラクリを作るために、意図的に成長率を高く見積もっているのです。
偽装3。公共事業関係費は6兆8500億円で、10年ぶりの規模です。国土強靭化、治山治水のためだそうです。建設現場は人手不足が続き、18年度は3・2兆円という大きな繰り越し(未消化)が生じました。では20年度予算で、なぜ削減しなかったのでしょうか。公共事業には成長率の押し上げ効果があるからです。つまり、公共事業を減らしては、税収見込みも低く見積もらざるを得ないので、繰り越しという不都合な事実は脇に置くのです。(つづく)
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