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2019-12-18 00:00
(連載2)香港人権民主主義法がもたらす効果
倉西 雅子
政治学者
他方で、何よりも中国が恐れているのは、同法案に含まれている内容を一般の中国国民が知ってしまうことではないかと思うのです。何故、国民が知ることが脅威となるのかと申しますと、それは、香港を介して本土の共産党幹部や政府高官、そして、富裕層がアメリカに秘かに資産や家族を移してきた実態が明らかとなるからです。
同法には、香港において人権侵害等に加担した中国政府、並びに、香港政府の人物に対する制裁措置として、資産凍結や入国禁止等の制裁を定めています。同条項が最も効果的であるとも評されていますが、この条項は、国民に対しては共産主義者として清廉潔白なポーズを取り、‘虎もハエも叩く’をスローガンに腐敗撲滅に積極的に取り組みながら、その実、‘敵国’であるはずのアメリカに‘逃亡先’を準備してきた中国の特権階級の存在を浮き上がらせています。つまり、同条項の存在自体が、中国の共産党一党独裁体制の不都合な実態を暴露しているのです。
中国本土では、目下、政府当局が全国民を完全監視体制の下に置き、ネット情報をも徹底的に統制していますが、海外諸国にまでは同統制は及びません。実際に、日本国内での中国人居住者の数は200万人を越え、中国人訪日客も2018年には800万人を突破しています。日本一国だけでこの数ですから、アメリカをはじめ全世界には相当数の海外在住の中国人がいます。国内にあっては完璧な情報統制を実施していても、こうした人々は、自由に情報を入手できますので、中国本土の一般国民の間でも、情報が当局に筒抜けとなるスマートフォンやネットの使用を回避すれば、やがては口コミによって同法の内容が伝わることでしょう。
今後、中国は、国民の愛国心を煽り、アメリカを‘敵国’とすることで国内の体制を引き締めようとすることでしょう。しかしながら、‘外部に敵を造る’という使い古された手法は、国民の現体制に対する不信感の高まりにより足元から崩れるかもしれません。この意味において、香港人権民主主義法の制定は、アメリカの妙手であったと思うのです。(おわり)
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