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2019-12-10 00:00
(連載1)国際金融的視点から見た中国本土経済
真田 幸光
大学教員
私は、しばしば、「中国本土にはバブル崩壊のリスクはないのか?」との質問を受けます。これに対して、私は、「中国本土国内にはまだ、強い内需があり、中国本土政府が成長のバランスをコントロールしながら運営しているので、そのマネージメント能力の高さから、リスクは低い。但し、国内の投資家に不安が出て、国内の投資家が投資資産の売却に出るとバブル崩壊は顕在化する可能性が出てくる。」とお答えしてきました。そして、海外投資家の中国本土からの資金引き上げリスクに関しては、「中国本土は未だに厳しい金融管理体制があり、外資勢が簡単には中国本土市場にアタックを仕掛けられない状況にある。」との見方をし、簡単にはバブル崩壊の引き金にはならないと見てきました。しかし、中国本土は、今、「国際金融の罠」にはまりつつあるのではないか、との懸念を私は持ち始めています。
中国本土政府・国家外貨管理局は、「国家外貨管理局年報(2018年)(以下、年報)」を発表し、中国本土の外貨準備の過去の運用実績、通貨構成などのデータを初めて明らかにするとともに、投資理念、リスク管理、運用体制などの状況を説明しました。この発表は、国際金融社会に本格的に参入していく自信がついたという一つの中国本土の思いの表れではないかとも見て取れます。そしてまた、年報でより多くの情報を公開することで国際金融市場の誤解を減らし、中国本土の外貨準備運用に関する国際信用力を高める上からも肯定的にこれを評価することは出来ましょう。
更に、実際に年報を見てみると、2005年から2014年までの中国本土の外貨準備の平均収益率は3.68%となっており、また、その通貨構成をみると、米ドルの比率が1995年の79.0%から2014年には58.0%まで低下し、米ドル以外の通貨の比率が21.0%から42.0%まで拡大しています。この変化についても、国際金融市場では、「中国本土の外貨準備の通貨構成はますます多様化し、世界の外貨準備の平均水準より分散している。これは、中国本土の対外経済貿易発展と国際決済のニーズにかなっているだけでなく、外貨準備の為替リスクを低下させるのにも役立つとも言える。」との肯定的な見方があり、また、「基軸通貨・米ドル」に対する挑戦を始めた中国本土の、ここでも一つの自信の表れとも言えましょう。
しかし、問題はここからです。年報によると、2018年の対外債務残高(以下、全て残高ベース)は1兆9,652億米ドルであり、このうち、中長期の対外債務が6,936億米ドルと全体の35.3%となる一方、短期は1兆2,716億米ドルと64.7%を占めた点に不安の種が生じており、更に、私たち、国際金融関係者の感覚からすると、その短期債務の多くは、「米ドル建て」で占められているのではないかという点が気になるのであります。(つづく)
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