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2019-12-06 00:00
(連載2)財政膨張派勝利の裏に都合のよい経済理論
中村 仁
元全国紙記者
黒田日銀総裁は「財政と金融政策の協調は、政策効果を高める」とまで言い切りました。「金融政策は出尽くし、限界にきているので、あとは財政でやってくれ」が本音でしょう。そうとは言えないので、「財政金融協調」という表現で逃げたのです。もっとも、財政膨張派も理論武装はしています。「GDP(国民総生産)が大きくなっていけば、GDPに対する財政赤字の相対的な比率が落ち、財政収支は改善していく」と、主張します。具体的には、国債利回りを上回る名目成長率が達成され続けていけば、それが可能となるというのです。
理論的にはそうであっても、それが成り立つ経済状況が永続するかどうかが肝心です。今は国債利回りはゼロかマイナスの状態です。そういう「状態」になっているというより、政治的な圧力もあり、中央銀行が金利をどんどん下げ、そういう「状態」を作ってきたのです。財政再建に好都合の条件がいつまで続くか。その説明が不足しています。この理論の人たちは「いつまでゼロないしマイナス金利が続くのか」について、理論的根拠を示していません。半永久的にこんな状態が続くと考えているのでしょうか。マイナス金利の長期化は弊害が大きく、望ましくないという議論がしきりです。また、インフレが頭をもたげてきたら、成長率を上回る金利が不可避になる。日本の名目成長率も、1.2%で、わずかなものです。何十年かければ、財政の健全化ができるというのでしょうか。
無視できない大きな懸念は、その何十年かのうちに巨大な震災が発生し、さらに台風、洪水被害が激甚化するなどといった自然災害の深刻化です。不可抗力的に財政出動に迫られる事態を予想して、ある程度の余裕を持っていることが必要なのに、平時から財政赤字を膨張させている。経済情勢とは無関係に、高齢化で社会保障も増えていかざるをえない。
日本の特殊事情がこの理論では、考慮されていません。経済成長率についても、生産年齢人口の減少がマイナス要因になります。日本の潜在成長率は1%程度まで低下しています。財政金融政策では、成長率を中長期的に引き上げることはできないというのが定説です。米国のように、成長余力や将来性がまだまだある国ならともかく、経済理論を日本にあてはめるには、よほど注意してかかる必要があります。(おわり)
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