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2019-12-04 00:00
(連載2)日本は米国の衰退を考慮せよ
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
韓国も日本と同じく駐留米軍に思いやり予算を支出している。トランプ政権は韓国に対して思いやり予算の5倍増を要求している。米韓は毎年思いやり予算などについて話し合いを持つが、来年度分に関しては交渉が決裂したという報道が出た。韓国政府は何と立派な態度であろうか。米韓同盟は朝鮮戦争で共に共産主義と戦ったということで、対等とまではいかないが、完全に従属的な日米安保体制とは異なるものだ。だから韓国側は言うべきことは言う、という態度に出ることができる。日本側には不可能な態度の取り方だ。また、韓国は中国との関係を良好に保つことで、北朝鮮との関係をうまくマネイジメントしている。韓国にとっては北朝鮮に攻撃されないということが重要であるが、その目的のために中国とアメリカをうまく利用している。韓国の経済力は世界トップ10に入るほどのものであり、韓国が北朝鮮から攻撃を受けて経済がダメージを受ければ困るのは米中であり、ロシアということになり、北朝鮮にとっては中露から頭を押さえつけられている格好になる。
日本は大変守りにくい国だ。昔は海に囲まれており、それが天然の要害ということになったが、戦艦の時代、航空機の時代、ミサイルの時代となっていき、防衛しにくい国になった。防衛予算をいくら増額しても完璧に守り切るということは難しい。それであれば米中韓露の間をうまくマネイジメントして物理的な防衛力に頼らない、経済力と外交力を混合した形で国を守る方策を採らねばならない。
しかし、日本がやっていること、やらされていることはアメリカ軍の下請けとなるということだ。アメリカから武器を買わされ、アメリカで訓練を受け、アメリカ軍と共同の司令部を持つ(実態はアメリカ軍の指揮の下に入る)というのは、アメリカ国防総省が進めるinteroperability(相互運用性)を高めるということであり、2015年の安保法制で自衛隊は世界各地に進出できるようになったことで、アメリカ軍と共に戦うことになる。完全にアメリカ一択の、アメリカの完全な従属国になるという安倍政権の選択は、しかし世界の情勢を見れば何ともバランス感覚に欠けた選択だ。リスクヘッジという考え方がゼロなのだ。アメリカと一緒に沈んでいくことを選んでいる。アメリカが沈んでいきつつある証拠は、駐留米軍にかかる経費負担に耐えることができずに、同盟諸国に支払うように求めている態度でも明らかだ。昔は景気が良かったお金持ちが凋落して金をせびって回っているようなものだ。
「沈む船から逃げ出すネズミ」という言葉には肯定的、否定的両方の評価があるが、国際社会で生き抜いていくためには、道徳的にはどうであろうと常に逃げ出す準備をしておかねばならない。その準備さえせずに、沈む船と運命を共にしても美談にもならない。(おわり)
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