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2019-11-28 00:00
(連載2)いわゆる徴用工問題の法的検討
緒方 林太郎
元衆議院議員
次は②ですが、ここはかねてから訴訟になって来た部分です。最近は日本でも、韓国でも、この個人請求権についても認めてきませんでした。個人請求権を求める裁判ではすべて原告敗訴でした。日本政府はこれまでの国会論戦の変遷の中で、「国家間で完全かつ最終的に解決したとしても個人請求権は残る。国家間の請求権の放棄とは、個人請求権を求めた裁判で敗訴となっても、韓国政府が外交保護権を行使して、国家間で日本に解決を求める事が出来ないという事である」という趣旨の事を表明して来ています。この論理の若干苦しい所は、「個人請求権を求めた裁判で勝訴となった時」の事を想定していないのです。近年までは、日本の裁判所も、韓国の裁判所も個人請求権について認めて来なかったので、それに対して韓国が外交保護権を行使せず、すべてが上手く回っていたわけです。その個人請求権を韓国大法院が認めたのが現在です。ただ、私が絶対にダメだと思うのが、大法院が判決を出したとしても、それに韓国政府が積極的に関与する事は協定の趣旨からして許されるものではありません。敗訴になった時に外交保護権を行使できないのと同じように、勝訴になった時に外交保護権を行使する事も出来ません。せいぜい判決に基づく執行レベルの関与があり得るだけであり、現在のように大統領を始めとする韓国行政府が本件を日韓外交のネタに持ち出している事は「協定違反」と言えるでしょう。文大統領に対しては「あんた、何を根拠にして口挟んで来てんの?」としかなりません。
そして、③ですが、今回の大法院の判決の(恐らくは)カギとなる部分です。この部分を新たに韓国大法院が見つけ出して(というか、こじつけて)、それまでの敗訴の判決を勝訴に切り換えています。②の部分で勝訴判決を出すのが苦しかったので、何とかして(勝訴判決を出せる)新たなエリアを探そうとして行き着いたのだと思います。ただ、①の所でも言ったように、こういうカテゴリーがそもそもあるのか、という問題があります。論理的に考えれば「ない」はずです。
とすると、③の部分の主張は、とどのところ②に吸収されていくはずです。そうやって考えると、韓国大法院の判決は新たにカバーされていない部分を見つけたわけでも何でもなくて、それまで(敗訴判決を出してきた)個人請求権裁判で審理していた範囲をグルグルと回っているとしか思えません。となると、審理しているものが同じである以上、法解釈を恣意的に変更しているのは韓国大法院ではないか、という事になります。
結論としては、個人請求権に関する日本の論理は少し苦しい所があるけど、韓国の方が遥かに無理に無理を重ねた論理を展開しているという事になります。そもそも、日韓財産・請求権協定の前文に「両国及びその国民の財産並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題を解決することを希望し、」とあるのです。その精神を没却するような事をやるんじゃないという点は基本的な視座として持っておくべきでしょう。(おわり)
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