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2019-11-27 00:00
(連載1)いわゆる徴用工問題の法的検討
緒方 林太郎
元衆議院議員
いわゆる徴用工問題について、色々な論者が色々な事を言っています。「日本は絶対に勝てる」から、「いや、日本の主張には穴があるので勝てるとは言えない」、「日本は負ける」まで幅広いです。ただ、見ていて思うのは、きちんと整理して話している人が居ないのです。「個人請求権」という言葉を錦の御旗のように掲げる人が居ますが、それは間違っています。 という事で、少し頭を整理したいと思います。まず、基礎知識として、1965年の日韓・財産請求権協定において、国家間の請求権は完全かつ最終的に解決したとなっています。それに対して、近年、韓国大法院が「日本の支配は違法であり、その事は協定ではカバーされておらず、解決されていない請求権がある」という判決を出しています。
韓国の主張が正しいかどうかはともかくとして(私は正しくないと思っていますが)、彼らの主張まで取り込んでマトリックスにすると下記図のようになるのだろうと思います。請求権の主体を縦、範囲を横に並べています。
請求権の主体としては、国家間のものと個人レベルのものがあります。ここは日本政府も認めています。また、請求権の範囲としては、日韓財産・請求権協定で放棄した請求権と(韓国が主張する)日韓財産・請求権協定ではカバーされていない、日本の支配が違法である事に伴う請求権というのがあると整理を付ける事が出来ます。勿論、日本は後者についてそんなものは無いと言っています。まず、右上の日韓財産請求権協定によって国家間で放棄された請求権については、さすがに韓国政府は何も言っていません。ここは完全かつ最終的に解決されています。
では、①から見ていきたいと思います。日韓財産・請求権協定を読んでみると、こんなカテゴリーの請求権は無いと思います。私は現職時代に、この点についてかなり詰めて聞いています(質問、答弁)。簡単に纏めると、あらゆる権利又は請求についていかなる主張もする事ができないとなります。なので、この協定の枠外に、日本による支配が違法である事に伴う国家間の請求権があると主張するのは無理です。ただ、韓国大法院は、日韓財産・請求権協定では日本の支配が違法である事については協定でカバーされていないという論拠を立てています。私によく分からないのは、そういう理屈を突き詰めるのであれば、国家間でも「まだ、解決されていない請求権がある(つまり、①のカテゴリーがある)」と主張してくる事すら可能です。ただ、現在、そこまではやってきていません。さすがにそこまでやるのは疚しいのでしょう。しかしながら、それは実は韓国側の論理としては筋が通っていないのです。(つづく)
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