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2019-11-16 00:00
デジタル人民元の潜在的な問題
多田 浩一
企業経営者
中国は、デジタル人民元の導入に向けて技術開発を進めています。中国では、人民元をデジタル化する研究が5年前から続いています。中国政府の狙いは中国の通貨人民元の国際化を進めドル覇権に挑戦することにあるというのは、有力な話です。デジタル通貨の強みは世界中で電子マネーのように使え、現金と同じように通用し、外国人でも手軽に使えることにあります。中国への旅行者や外資企業だけではなく、外国人同士、外国企業同士といった中国国外で完結する決済でもデジタル人民元が利用されれば、国際通貨としての地位は確実に向上するでしょう。また、中国にとってはドルが国際社会で圧倒的な通用力を持っている現状では中国自身ドルを用いた決済をせねばならず、アメリカ政府に監視されるリスクもはらんでいます。それを人民元で処理できれば、アメリカから通貨政策上もより自立でき、ドル覇権に孔を開けることができます。
デジタル人民元の問題点は、恣意的な「匿名性」の運用です。中国に都合がよくデジタル人民元がトレースできたりできなかったりすれば、国際的なマネー・ロンダリングが意図的に見逃されたり、逆に中国がリスクと考える人々や企業、国の資金の流れを中国政府が過去にさかのぼって把握することも起き得ます。中国でアリペイなどのキャッシュレス決済が世界に先駆けて普及したのは有名な話ですが、中国政府がそのシステムを用いて個人や企業の資金の流れをチェックすることができるのは示唆的です。
もちろんこれが健全に運用されれば、犯罪を抑止し、マネー・ロンダリングや違法な海外送金にも有効でしょうから、要はどういうふうに技術が用いられるかが重要です。中国は、習近平一強体制が定着し独裁色が強まったことで、自由民主主義陣営の論理を理解し導入する可能性が殆どなくなってしまいました。むしろ、世界第二位の強力な経済力を背景に、中国独特のルールや価値観をデファクト・スタンダードにしようとしているようにすらみえます。
デジタル人民元を中国政府がどのように運用するつもりなのか、また他国や外国企業にどのように普及させていこうとするのかを注視することで、中国がこの世界でどのような国家を目指しているのかが見えてくるのかもしれません。これを日本として座視するだけというのは、よくありません。日本も同じようにデジタル円で対抗せよとは言いませんが、しっかりとこの問題にどう相対していくのか、そこは明確にすべきでしょう。
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