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2019-11-07 00:00
(連載1)「クルド人を裏切った」アメリカをどう考えるか
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
クルド人自治区の問題に関しては、アメリカ人やイギリス人が、なぜクルド人を保護するのかということはあまり知られていない。一つ端的な例を上げれば察しが付いてくるはずだ。例えば、「ミサイルによってIS幹部が死亡」とか「幹部○○人死亡」というような発表が政府から出され、皆さんはその詳細な数字や死亡した人間の中にIS幹部が含まれることを知ることができる。よく考えると戦場に有力で協力的な現地部隊がいなければ知り得ないことだと気づくはずだ。そう、ISとの戦いで実際にIS勢力と戦い、ISの詳細な情報を提供する役割を担っていたのがクルド人勢力である。
実際にミサイルによってその人物のいた建物が爆発したとしても本人かどうかや人数を特定しなければ戦果とは言えない。よって、ミサイル攻撃や空爆による被害の特定というのは、現地にいる人間が何らかの形で知らせる必要がある。その人のすべてとは言わないが、その中で重要な役割を果たしていたのが、間違いなく、現地に住んでいるクルド人であった。
さて、今回のアメリカのシリア北部撤退と、それに基づいたトルコ軍の侵攻、そしてそのトルコに対してのアメリカの反撃がないという事実の解釈は、「アメリカはまた中東の味方を見殺しにした」として間違いない。このようなクルド人の話は間違いなく、あのアルカイダと同じケースだ。アルカイダは、1980年代のイランイラク戦争の時に、スンニ派側、つまり反イランの現地組織として、CIAが利用した組織である。アルカイダはアフガニスタンに逃れ、反米テロ組織となった。
この時もアメリカ軍は、「契約では『努力する』と言っただけで、アルカイダの要求をすべて保証したわけではない」と主張する。契約社会であれば、契約に書いていない義務はすべてやる必要がない。一方で、日本や、中東、アジアの国であれば、契約書に書いていない「関連内容」は協力して当然であるというような感覚を持つ。「最大限の努力」といえば、その最大限の努力をし、そして、その努力の結果を求めることになる。しかし、その結果が伴わない場合は、契約違反ではないにしても何らかの言葉があっていい。よく「誠意を示せ」という言葉の裏にある認識だ。その時に、「アメリカとしては契約書に書いていないのでそこまでの義務はない」と木で鼻をくくったような話になれば軋轢が生じる。(つづく)
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