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2019-10-24 00:00
資本主義の最後の鐘が鳴る
大井 幸子
国際金融アナリスト
一体どこまで金利が下がるのか?先進国ではマイナス金利が深化し、マーケットは異常な事態に陥りつつある。そもそも、資本主義においては「利子が利子を生む複利効果」による資本の増殖が原則である。マイナス金利が限度を超えれば、資本主義そのものを破壊しかねない。
著名なOxford Economicsのエコノミスト、アダム・スレーター氏によれば、政策金利(実行ベースで)はマイナス1%程度が限度で、それ以上マイナスになると、人々は銀行から預金を引き上げ、現金を金(ゴールド)や貴金属に変えるか、別の国に資金を逃避させる行動に出るという。マイナス金利は銀行の収益を圧迫するし、銀行の経営が立ち行かなくなり株価が下がれば、景気全体が冷え込み、生産体制は縮こまる。せっかく量的緩和(QE)でお金をジャブジャブにして、株や不動産などの資産価値が上がってきたのに、こうした「富裕効果」も萎んでしまうだろう。このようにマイナス金利は行き過ぎると、とんでもないことになる。そして、スレーター氏によれば、この限界まで金利の引き下げはあと0.4-0.5%のわずかな「のりしろ」しか残されていない。
景気が悪くなると、物が売れない。物が売れないと製造業は縮小するし、サービス産業も打撃を受ける。不景気で多くの失業者が出て、中間層がますます下向する。しかも「富裕効果」が消えれば破綻する資産家も増える。貧困化が進み、社会不安が増大するだろう。こうした未来が見えるのに、政府の財政赤字は増え続け、税金は高くなり、市民はちっとも豊かにならない。資本主義が間違っているのだろうか?現に、トランプ大統領に挑戦する民主党ウォーレン氏やサンダース氏は米国に社会主義をもたらそうとしているように見える。一方、中国は共産党独裁国家でありながら市場経済に向けて発展を続けてきた。その中国の中央銀行PBOCは金を買い増している。
カール・マルクスによれば、恐慌が繰り返され、一部の大資本家と大多数のプロレタリアに二極分解して階級闘争が起こり、やがて革命が起こって資本主義体制が崩壊し、プロレタリア独裁の社会主義へと移行する。我々は今、その道半ばにあるのか?世界のどこかで「資本主義的私有の最後を告げる鐘が鳴る」時はいつか?その時に私有財産はなくなり、金利もなくなり、自由もなくなり、恐ろしい全体主義がはびこるのだろうか。香港市民はその恐怖と戦っている。
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