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2019-10-17 00:00
(連載2)米朝実務者協議に期待感ゼロ
倉西 雅子
政治学者
さらに、7日に至りますと、帰途の経由地である北京空港において記者団を前に「米国がきちんと準備できないなら、どんなひどい出来事が起きるか分からない」と述べています。この発言は、明白なる対米脅迫です。北朝鮮側は一切の妥協を拒否し、アメリカに対して譲歩するよう迫っているのです。SLBMの実験は、北朝鮮がこの日のために準備した脅迫手段であったのかもしれません。
それでは、北朝鮮の態度を硬化させたのは、何者であったのでしょうか。もちろん、金代表に交渉を任せつつも、平壌において逐次報告を受けていた金正恩委員長が、協議内容、あるいは、金委員長の対米融和的な態度に不満を抱き、即、その破棄を金代表に命じたのかもしれません。会談終了後の5日6時半頃に金代表が‘決裂’を公表したのは、北朝鮮大使館前であり、しかも声明を読み上げる形でしたので(既に誰かが声明文を作成している…)、本国からの指令を受けた可能性も否定はできません。
あるいは、中国経由で帰国の途に就いていますので、習近平主席からの介入があったとも考えられます。折も折、6日には、中朝国交70年を記念して両国の首脳が祝電を交換しています。双方とも両国間の絆を強調しており、中国側から今般の対米融和的な協議の継続に釘を刺されたのかもしれません。北京空港での金代表の脅し文句は、アメリカではなく、習主席に向けた最大限の対中友好のアピールであった可能性もあるのです。
以上の推測の他にも、単に北朝鮮側が虚偽の発言をしている、あるいは、米朝が結託して国際社会を混乱させる意図で情報発信をしている可能性もあり、真相はこれからわかるのでしょう。少なくとも独裁国家と実務者レベルで交渉しても、事態を混乱させるのみです。むしろ、独裁国家側に翻弄されて目的を見失い、巧妙に北朝鮮有利に誘導されてしまう可能性の方が高いように思えるのです。(おわり)
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