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2019-10-16 00:00
(連載2)高コスト社会の到来と鈍るコスト感覚
中村 仁
元全国紙記者
自衛隊が宇宙安保を強化するという記事を最近、見かけました。他国の人工衛星を攻撃できるキラー衛星が登場し、地上を守るだけでは間に合わなくなり、宇宙空間での自衛隊の対処能力を強化していくのだそうです。軍事予算は軍需産業を潤しても、経済成長に与える効果は民生中心の経済活動に比べて劣ります。それでも、安全保障のためといえば、効果は不透明なまま、予算はまかり通る。
次は環境対策コストです。国連で「気候行動サミット」が開かれ、「77か国が2050年の温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」ことを申し合わせました。ドイツは石炭利用を38年にゼロにするほか、23年までに6兆円の温暖化対策費を投じるそうです。温暖化対策は世界全体で推進しなければならないのに、最大のCO2排出国である中国、米国は動こうとしない。日本は原発に急ブレーキがかかり、石炭火力への依存度が高まっているので、前向きになれない。国連の気候変動に関するパネル(IPCC)は、「対策が不十分なら、2100年に平均海面水位は最大で1・1㍍上昇する。2300年には5・4㍍の恐れ」と、警鐘を鳴らしました。
「温暖化で海洋が酸性化し、世界の漁獲量は減っていく」、「海面の上昇で沿岸部の都市は、100年に一度しかなかったような高潮に見舞われる」というのに、温暖化対策は遅遅として進まない。沿岸部は高い防潮堤が必要になり、その費用は津波対策のレベルではない。「一国だけで取り組んでも効果が知れている」「費用も膨大」と、あきらめているのでしょうか。割を食うのは次世代以降の人たちです。早く取り組めば、対策費は少なく済み、放置しておけば、膨大な被害が発生する恐れがあることははっきりしています。対策の先送りによる費用の増大を、真剣に心配する人たちがいないのです。
人口の高齢化で先進国ほど、年金・医療などの社会保障コストが増えていきます。社会保障の仕組み、つまり高齢者を支える若者は減っていく。経済成長率は低下し、税収は減り、その一方で社会保障支出が増えていくので、財政赤字の膨張は止まらない。環境問題でも、社会保障、財政赤字の問題でも、割を食うのは次世代以降の若者たちです。次世代への費用の先送りが政治家や有権者にとって、最大の政策になっているのは悲しいことです。(おわり)
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