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2019-10-15 00:00
(連載1)高コスト社会の到来と鈍るコスト感覚
中村 仁
元全国紙記者
「おカネをやたらと食う」、「重いコストがのしかってくる」というニュースが連日、流れてきます。以前は、需要超過でインフレ圧力がかかりやすい「高圧経済」の時代が続きました。それに代わって最近は、「高コスト社会」の到来と呼んだほうがいいような時代になったと思います。
コストが上がっても価格をあげられない。経済成長率も世界的に低下している。ですから高コストは企業収益を圧迫し、所得が伸びない個人は出費の増加で、生活が苦しくなる。それが成長率をさらに押し下げる。政府は財政赤字の増大に悩む。経済社会が悪い悪循環にはまったようです。
なぜ高コスト社会になったのか。大きくいえば、米中が覇権交代期を迎え、安全保障政策の強化が必要になった。経済成長の結果である環境汚染・温暖化が進み、環境コストが膨張していく。人口構造の高齢化に伴う社会保障コストの増大もあります。さらに政治がポピュリズムに入り、経済合理性を無視した政策が乱発され、コストを押し上げていきます。費用・コストをかけたら、どの程度の効果が得られるかが不透明なまま、政策、対策が先行していく。費用・コストをかけることが政治であるかのような錯覚にも陥っている。膨大なデータを集積し、分析する人工知能(AI)の時代に入ってたのですから、世界を覆う高コスト構造の解明はできないものか。識者も学者も事細かな問題提起に終始しすぎています。
まず米中の覇権争いです。米国が世界の覇権を握る「1強時代」が終わり、中国が軍事的、地域的、経済的に勢力を拡張する時代に入りました。ライバルの国は安全保障政策を強化しなければならなくなり、国防・軍事費の増大が不可避となっていく。覇権争いに出口はあるのか、決着がつくのか分からない。(つづく)
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