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2019-10-09 00:00
(連載2)バランスが崩れた日米貿易協定交渉
緒方 林太郎
元衆議院議員
多分、「制裁関税回避」を逃れたという反論があるでしょう。仮にそれが事実だとしても、TPP12で確保したバランスが二重に崩れている事には変わりはありません。そして、制裁関税は全然回避されていません。今年9月の令和元年9月25日日米共同声明の何処にも制裁関税を打たないとは書いてありません。「制裁関税を打たないという趣旨だ」、「ライトハイザー通商代表はやらないと言っている」、色々な反論があるでしょう。単にそれは、ライトハイザー通商代表が言った通り、「At this point(現時点で)」やらないだけです。
そもそも、安倍総理はTPP合意時に「交渉は色々あったが、合意文書に書いてあることがすべて。」と言い続けました(情報公開を拒むための方便でしたけど)。そうなのです。紙に書いてあることがすべてなのです。それ以上でも、それ以下でもありません。また、ここには「誠実に(faithfully)」という言葉が出て来ます。ここで言う「誠実に」は何を意味しているかは分かりにくいですが、恐らく、貿易赤字が減らなければ誠実に履行していない、だから制裁関税だ、と吹っ掛けてくるためのヘッジでしょう。そして、日米貿易協定ではアメリカの対日貿易赤字は絶対に減りません。つまり、日本は制裁関税のリスクを常に抱え続ける状態です。
結局、日米貿易協定はとても日本にとって不利なものだったという事です。大体、よく考えても見てください。トランプ大統領が交渉したNAFTA見直しは、現在、連邦議会で侃々諤々議論されており、(ウクライナ・ゲート問題等も相俟って)議会を通過する見通しがありません。結構、カナダ、メキシコからそれなりの成果を得ているのですが、それでも連邦議会では様々な問題指摘があります。一方、日米貿易協定はあまりにアメリカの譲歩が無いので、連邦議会は関心すら持っていません。議会審議すらしないで発効させそうです。その事実を以てしても、如何にこの協定が日本にとってバランスの悪いものとなっているかを裏付けているでしょう。
こうやって整理してみると、この日米貿易交渉の日本側対処方針として「TPP12の結果から見た得喪でバランスを取る」という事は無かったんだろうな、という結論に到達しました。とすると、どういう対処方針で臨んだのか、何が指針だったのか、何との関係でバランスを測ろうとしたのか、という事にとても関心があります。多分、政権は「昨年9月の共同声明が交渉の指針。そして、その範囲に収めた。」と言うでしょう。ただ、その昨年9月の共同声明自体のバランスが崩れていては、説得力がありません。(おわり)
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