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2019-10-02 00:00
台風15号とシーレーンどちらも危機管理が重要
大井 幸子
国際金融アナリスト
先月8日、台風15号が千葉県に上陸し大きな被害が及んだ。電気なし、水なし、ネット情報なし・・・ライフラインは絶たれ、孤立して助けを求めることもできない。最悪のケースを想定した危機管理がまるでなっていない。まさに最悪のケースだ。他方で、同14日にサウジアラビアがドローン攻撃を受け、アブカイクが破壊された。サウジアラムコが1日当たり570万バレルの産出量を失ない、原油とガスの生産量が5割減少し、復旧には数週間以上かかると報じられた。日本は国内の自然災害に対する災害対応で躓いたばかりだが、伝統的な問題である原油の安定確保の面でも危機管理能力が試されている。
更にイランは攻撃を否定しているが、米国はイランを非難した。一時英米は軍事的な報復を行う可能性もちらつかせたほどだ。米国は今の所、経済的なカードを切るに留めているが、サウジとイランの軍事衝突の可能性があり、また米国自体の軍事オプションが今後もないとはいいきれず「ホルムズ海峡波高し」となるリスクは高まる。私は5月以降、シーレーン確保が日本にとっての死活問題であると述べてきたが、今がまさに日本の危機管理が試される時だ。
地理的に見ると、ホルムズ海峡に加えて、もう一つのチョークポイントがある。マラッカ海峡から南シナ海を通る海域である。ここに中国海軍が大規模な軍事基地を建設してきたことからも、リスクは明らかだ。10月1日に建国70周年を迎えた中国は、4ヶ月以上も続き情勢が緊迫している香港のデモ隊や、来年1月に総統選挙を控えた台湾政府にも大きな政治圧力を加えている。神経質になった中国がこれらのチョークポイントに配備した部隊でリスクを高めないとも言い切れない。
では、原油やアルミニウムなどの資源の供給が困難になると、日本はどうなるのか。国内各所に法律で定められた原油の備蓄があるので価格の急騰はすぐにはないかもしれない。しかし、それでもホルムズ海峡での軍事衝突や国際問題が長期化すれば、原油価格は上昇する。1970年代のオイルショックとまではいかないかもしれないが、昨日からの消費税率引き上げに追い討ちをかけるように日本経済にとって大きなマイナスになるだろう。原油生産量で世界第3位のサウジからの原油輸送を日本はシーレーンに依存している。そのため、日本との関係で、原油価格の上昇で得をするのは、シーレーンを通らないルートで原油とガスを日本に供給できる米国とロシアである。彼らは大きな「漁夫の利」を得るだろう。
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