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2019-09-09 00:00
(連載1)香港は「アジアのシリア」になるのか
岡本 裕明
海外事業経営者
暴動が続く香港は今後どうなるのでしょうか?中国という巨大な体制に対峙する740万人の香港市民は何を考えるのでしょうか?日本人が考える香港のイメージはお金持ちかもしれません。世界一高額な不動産市場や自由な金融市場を背景にさぞかし金持ちが多いと思うかもしれません。確かに家庭所得の中央値で見ると年収420万円ぐらいになるので日本より高いのですが、所得格差が大きく、2016年で上位10%と下位10%の所得格差は44倍、ジニ係数は0.54という調査もあります。所得分配の不平等さを図るジニ係数は0.54と世界の主要国と比べてもトップクラスであります。
その香港は英国の植民地として、あるいは、自由貿易の拠点として70-80年代に大きく伸び、その後の不動産ブームで香港の高層ビル群に我々日本人も驚いたこともありました。ところが、97年の香港返還で、中国の「一国二制度」下に入るのみならず、50年後の2047年には中国本体と一体化することが目論まれています。仮に中国で今の共産党体制が継続するならば香港の人にとって様々な自由が剥奪されてしまいます。例えば不動産の個人所有はどうなるのでしょうか?中国では個人所有は認められていません。使用権です。日本でいう借地権のようなものでしょう。あらゆる常識があと28年程度でひっくり返る可能性があるのです。
では、香港から脱出すればいいじゃないか、と考えますが、それができるのはある程度の資産をもった人か高学歴で技術や能力を持った人で、それらの人はすでにオーストラリア、カナダ、英国などに永住権を持っている人も多いとされます。今、香港でデモに参加している人たちはそんなオプションがない人たち、ないし、まだ若くてそれらの資産や技能を十分に確保していない人たちの声かと思います。仮にこの対峙する関係が今後も平行線のまま期限の2047年に近づいてくれば、どうにかして香港から脱出しようとする香港人が増えてくるかもしれません。これが「アジアのシリア化」であり、移民ではなく、政治的難民として世界に散らばる可能性があります。
オーストラリア、カナダ、英国などは永住権のハードルを上げました。人数枠は十分にあり、カナダにおいては毎年人口の1%を移民として受け入れるほどでありますが、かつての「経済移民」のようにお金で移民権を買うのはほぼ困難かとてつもない資金を投じなくてはいけません。移民するには十分な学歴、技能、経験が問われるのです。一般市民が誰でも対応できるレベルではありません。(つづく)
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