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2019-08-22 00:00
(連載1)政治主導の金融政策によるバブルの火種
中村 仁
元全国紙記者
世界のマネー市場に溢れる緩和マネーが、いつ反乱を起こすか。反乱を起こせば、バブルの崩壊です。そのための金融政策の正常化(過剰マネーの縮小)を米国は断念し、金融を再び緩めました。政権維持のためには、株価維持が政権支持率とともに、最重要の政治目標になってしまっているからです。世界経済はバブルを起こし続けないと、株価が急落する。ですから本格的なバブル退治に乗り出せない。それどころか、景気が悪化しそうになると、金融を緩めてしまう。世界経済はバブルの火種を抱き、バブル崩壊の危機と同居する構造になっています。バブルは、いつかは崩壊する。ここ何十年かは、ほぼ10年に一回の確率で崩壊しています。
米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利を0.25%引き下げ、10年半ぶりの利下げに踏み切りました。08年のリーマンショック(国際金融危機)による巨大なバブルの崩壊後、政策金利を一気に0%まで下げ、危機収拾にあたりました。金融情勢が落ち着いてきたのを見て、15年末から金利を反転させてきました。それにもかかわらず、今回の利上げで、金融政策の正常化は道半ばで中断することになったのです。FRBはリーマン危機後の量的緩和で、金融機関に対する資金供給を5倍に増やしました。日米欧中も同調し、資金供給を急増させました。それで経済が立ち直ったかというと、世界のGDP(国内総生産)は10年間で1.4倍になったにすぎず、株価(時価総額)だけが3倍に膨らんだ(日経)のです。
日本でも、安倍首相・黒田日銀総裁のコンビによる緩和を13年から始めました。日銀の国債保有は、発行総額の4割、上場投資信託(ETF)は株式時価総額の5%になり、その分、日銀から市場に資金供給されました。日本の実質経済成長率は1%程度に過ぎず、緩和マネーの効果はたかが知れています。「人口減少、グローバル化、ネット社会化が日本社会を根底から変えてしまった」(吉見俊哉著『平成時代』岩波新書)。ですから金融政策、さらに財政を膨張させても、経済体質を強化できない。グローバル化とネット・デジタル化は先進国経済にとって共通の現象です。
米国の利下げは「貿易戦争による景気悪化に備えた措置」(FRB)であるにせよ、トランプ大統領がパウエル議長の解任まで示唆し、執拗に圧力をかけた結果です。0.25%下げには「小幅すぎる。失望した」と、不満のようです。来年の大統領選に向け、「中国とは貿易戦争を続ける。その結果として、景気が悪化(株価下落)することも許さない」というスタンスです。中央銀行は政治からの独立性、中立性を保たないと、政治の圧力に屈し、短期的な思惑や損得勘定に走った金融政策に追い込まれます。トランプ氏には言いたい放題の暴言癖があるにせよ、議長解任まで示唆するのは、金融政策の基本的な役割に対する無知、非常識に基づくものでしょう。(つづく)
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