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2019-07-31 00:00
(連載2)日韓財産請求権協定に「穴」はない
緒方 林太郎
元衆議院議員
ここまでで分かる通り、協定自体はかなり精緻に出来ていますが、韓国が上記で言うB国を選ぶ行為すら拒否すれば、このプロセスは動きません。どんなに仕組みを精緻化しても、韓国が何もしない時というのはどうしようもありません。ここだけは「どうしても塞げない穴」になっています。しかし、この韓国の立ち振る舞いは日韓財産請求権協定の精神を没却するものです。この協定のベースとなる精神が述べられている協定前文には、「日本国及び大韓民国は、両国及びその国民の財産並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題を解決することを希望し、両国間の経済協力を増進することを希望して、次のとおり協定した」と記載されています。「解決することを希望」したのではないのか、ということなんです。
多分、韓国は仲裁手続で勝てる自信が無いのだと思います。日韓財産請求権協定を交渉する過程では、今回の韓国大法院判決や韓国政府の主張のような事はすべて「想定の範囲内」でした。大法院は「日本の支配は違法であったが、その違法であった事が日韓財産請求権協定における請求権では取り込まれていない。」という主張をしています(時折誤解がありますが、韓国大法院の判決は個人請求権の文脈ではありません)。つまり、簡単に言うと「日韓財産請求権協定で放棄した請求権には『穴』が開いている」と述べています。
しかし、韓国が放棄した請求権とは、日韓財産請求権協定の合意議事録で「『法律上の根拠に基づき財産的価値を認められるすべての種類の実体的権利』とされている『財産、権利及び利益』に当たらないあらゆる権利又は請求を含む概念である」と解されています。「穴が開いている」と主張する(今の韓国大法院や韓国政府)のような存在を念頭に置いて、そういう逃げ道を塞いでいます。そして、その請求権については「いかなる主張もすることができない」となっています。仮に韓国に一万歩譲って、日本の支配が違法なものであったとしましょう。それでも結論は変わらないのです。そういうものを含めて、すべて「いかなる主張もすることができない」と合意しているわけです。
自国の論理に自信があるなら、仲裁手続きであろうが、今後やってくるであろう国際司法裁判所であろうと堂々と受ければ良いだけです。勝てる自信が無いので逃げている、と見ていいでしょう。日本政府としてはそこまでは言いにくいでしょうから、周囲が「あれは自信が無いから逃げているだけだ」と国際的なキャンペーンを打ってみるのは一案だと思います。(おわり)
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