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2019-07-15 00:00
(連載1)アメリカが北朝鮮に譲歩した理由とは
倉西 雅子
政治学者
6月の最後の日は、朝鮮戦争の休戦協定から66年を経て初めてアメリカの大統領が北朝鮮の地を踏んだ記念すべき日となりました。トランプ米大統領のツイッターによる呼びかけに金正恩委員長が応じるという異例の展開となったのですが、‘歴史的対面’と評価する向きがあるものの、両国の行く先を不安視する声の方がやや強いようにも思えます。同会談後の記者団への説明においてトランプ大統領は今後のアメリカ政府の対北交渉の基本方針を示しております。
中でも特に注目されるのは、非核化交渉の進展を急がない、並びに、アメリカが問題視しているのは長距離弾道ミサイルとする2点です。同情報が事実であれば、アメリカは、北朝鮮に対して強くCVID方式の核放棄を迫ったわけでもなく、また、短中距離ミサイルの開発・保持については黙認したことにもなります。いわば、アメリカ側が北朝鮮に対して大きく譲歩しているのです。北朝鮮側も、早々に米朝交渉の再開に言及し、今後の対米交渉に向けた期待感を表しており、今後、両国が組織する実務担当の交渉チームによって、詳細が詰められることとなりましょう。
アメリカが態度を軟化させた主たる理由として第一に推測されるのは、先の習近平国家主席による訪朝です。米中対立がエスカレートする中、習主席が敢えて自ら北朝鮮に出向き、同国を自陣営に取り込もうとしたため、焦ったトランプ大統領が急遽予定を変更して北朝鮮を電撃訪問し、上記の‘譲歩’を手土産に北朝鮮をアメリカ側に引き寄せたとする説です。この説では、北朝鮮は、米中対立を自国に有利な方向に巧みに利用し、中国さえも手玉に取ったことになります。厳しい経済制裁下にあって高まっていた北朝鮮国民の金委員長に対する不満も低減するでしょうし、何よりも、アメリカと対等に渡り合う偉大な姿を国民に披露することもできたのですから、金委員長にとりましては、トランプ大統領の訪朝は渡りに船であったはずです。
それでは、北朝鮮の‘蝙蝠外交’は、当事国、並びに、周辺諸国にどのような影響を当てるのでしょうか。中国からしますと予想外の‘裏切り’あるいは米陣営への‘寝返り’となりますので、北朝鮮に対する態度は硬化せざるを得なくなるでしょう。また、アメリカの対北妥協は、北朝鮮の核や中短距離ミサイルの脅威に晒されている日本国にあっては、アメリカから‘置き去りにされた’とする感を強めます。日米同盟破棄発言が報じられた矢先であるため、安全保障に対する不安感とアメリカに対する不信感は高まるかもしれません。そして北朝鮮を翻意させたアメリカもまた、自国の利益にさえなればどちら側にも靡くと言う北朝鮮の‘主体思想’は長期的にはリスク含みとなりましょう。(つづく)
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