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2007-05-20 00:00
コムソフィア賞に思う
佐島直子
専修大学教授
先週の五月十二日(土)に、第十七回コムソフィア賞の受賞式に参列した。今年の受賞者は、フリー・ジャーナリストの安藤優子氏である。コムソフィア賞は、上智大学出身者で国際的な活躍をする者に贈られる賞である。過去の受賞者は現学長の石澤義昭教授など錚錚たる顔ぶれであるが、恥ずかしながら私も、一昨年の二〇〇五年に第十五回コムソフィア賞を受賞させていただいている。私の受賞理由は、その前年に編集代表として刊行した『現代安全保障用語事典』の「パイオニア的業績」ということで、事典という図書館の片隅で埃をかぶるだけだった目立たぬ刊行物に過分な御評価を頂いた。一方、今年の安藤氏は、いうまでもなく、浮沈の激しいテレビ業界にあって、二十数年間、第一線で活躍し続けている偉業が受賞理由である。
ただ、例年であれば、理事長、学長、同窓会長が列席し、現役学生も多数参加する賑々しい授賞式なのだが、残念ながら今年は、選考母体のマスコミ・ソフィア会の創立二十周年であったにもかかわらず、直前の麻疹(はしか)騒ぎで、大学関係者の出席が少なくいささかさびしい式典ではあった。ともあれ、受賞後のスピーチで安藤氏が感涙のあまり、言葉につまると、思わず涙腺のゆるむ列席者もいるなど、心温まるひとときとなった。
考えてみれば、日々視聴率競争に追われるテレビ業界は、数あるマス・メディアのなかでも、もっとも魑魅魍魎が跳梁跋扈する世界であろう。そのなかで、テレビ局という大樹にまもられた局アナ出身者でもない安藤氏が、長い年月、看板番組のキャスターであり続けた影には、人知れない努力やご苦労があったことだろうと推察される。実際、今でも、現役の大学院生として修士論文の執筆中だそうである。
女性のフリー・ジャーナリストといえば、なんといっても櫻井良子氏が思い浮かぶが、既に桜井氏は、主たる活躍の場を月刊誌、週刊誌の執筆活動に移されており、テレビ業界における安藤氏の存在は希少である。国際問題、安全保障問題への国民的理解とその成熟にとって、テレビ・メディアの果たす役割は計り知れない。これまで安藤氏は、己の政治的立場をあまり明確にされては来なかったように見受けられるが、これからは躊躇することなくテレビ言論界をひきいる存在になっていただきたいものである。また、現在、長年「雄たる存在」だった男性キャスター陣の老齢化が問題視されており、その世代交代は喫緊の課題であろう。安藤氏に限らず、四十代、五十代ジャーナリストの成熟したソフィア(知性)の登場が切に希求されている。
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