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2019-06-14 00:00
(連載2)米中「新冷戦」と日本の対応
伊藤 和歌子
非営利団体職員
そうした中、発生したのが貿易・投資分野における米中対立である。米国は、2018年8月に可決された米国国防権限法に輸出管理改革法(ECRA)および外国投資リスク審査近代化法(FIRRMA)を改定し、米国政府による中国の特定5社(ファーウェイとZTE、監視カメラ大手のハイクビジョン、ダーファ・テクノロジー、ハイテラ)の製品調達を禁止し、さらに同5社の製品を使用する企業との取引も禁止した。
こうした動きに対し、中国は全人代の政府活動報告で「中国製造2025」に言及しないなど、いったんは米国に譲歩する姿勢を見せた。しかしながら中国は、その後、米中貿易交渉の合意文書を大幅に修正し、その結果、米中間の関税引き上げの応酬が再燃した。修正箇所は知的財産・企業秘密の保護、技術の強制移転、競争政策、金融サービス市場へのアクセス、為替操作の分野における法改正とされる。だとすれば、こうした中国の対米強硬路線は、法改正にまで踏み込む米国のやり方にノーを突き付けるという中国の覚悟の表れかもしれない。
いずれにせよ、現時点では、このような米中対立がにわかに改善するとは考えにくい。もちろん、トランプ大統領が公約を掲げた対中貿易赤字の削減が一定の解決を見たと判断したときには、習近平国家主席とディールを結んでしまうという可能性は残る。しかし中国に対する警戒感は、いまや米国のみならず他の西側先進諸国にも広がりつつある。また、現下の米中対立を「新冷戦」と捉える向きもあるが、そこには一過性の「摩擦」を超えた、価値や理念をめぐる既存の先進国と中国などの新興国との体制間競争の性格も垣間見られるからだ。
そこで問われるべきは日本の対応である。短期的には米中対立の「漁夫の利」を得んとする立ち回りも考えられなくもないが、むしろ日本としては、中長期的な視点に立ち、米中双方にインド・アジア・太平洋地域の望ましい国際秩序の構築に向けた軌道修正を働きかける、というのが正道であろう。大国化した中国を「封じ込める」などという選択肢はとうに失われている。既存の先進国と新興国が共存共栄しうる国際秩序はどうあるべきか、何を守り、何を変えるべきなのか、そうした問いに日本は真剣に取り組むべき時期にきている。(おわり)
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