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2019-06-13 00:00
(連載1)米中「新冷戦」と日本の対応
伊藤 和歌子
非営利団体職員
ここ1年で、米中関係は悪化の一途を辿り、その対立は貿易面のみならず、いまや軍事面にまで及ぼうとしている。例えば中国は、ステルス爆撃機「H-20」の試験飛行に加え、極超音速兵器や潜水艦発射弾道ミサイル「JL-3」の発射実験の実施を国内外に誇示しており、一方、米国は台湾への武器売却を敢行したほか、無人偵察機の東南アジア諸国(マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム)への売却の意向を示している。こうした対立悪化の要因は多面的であるが、米国政府の対中認識の変化が事態の後押しをしていることは否めない。
第一に米国による「中国に対し関与政策を続ければ、やがて中国国内では政治的自由化が進み、対外的には国際秩序に順応してゆくだろう」との期待が失望に変わったこと、第二に中国でビジネス展開をする米国企業に対し不当な関与を行う中国当局への不満が膨張しつつあること、第三に中国による先端技術の窃取や知的財産権侵害が米国国内経済や安全を内側から侵食する要因として捉えられつつあること、また第四に「中国製造2025」の発表が米国側の警戒感を一挙に強めるきっかけとなったこと、などである。
こうした米国の対中認識の変化を背景に、米国の対中政策は「関与」から「競争」へと舵をきりつつある 。米国の『国家安全保障戦略』や『国家防衛戦略』には「大国間競争」や「戦略的競争」との文言が入るようになった。また、中国による次世代情報技術「5G」を支配する動きについては、技術覇権への挑戦と捉えられている。一方、中国も、GDP世界第2位に躍り出て以来の約10年間で、それまで「お手本」であった西側先進国の民主主義政治体制/自由主義経済体制についての評価を変えつつある。
とくに2008年のリーマン・ショックを通じて露呈した自由民主主義経済体制の欠陥、また2016年のブレクジットやトランプ大統領当選を通じて露呈した民主主義政治体制の脆弱性(ポピュリズムの顕在化)などが、その傾向に拍車をかけたといっていいだろう。中国は現在、「民主化の伴わない経済発展」を実現した国家グループの中心的存在になろうとしており、「一帯一路」沿線国では経済支援や通信インフラの提供を、またアフリカでは経済進出や軍事協力、メディア操作などを推し進めている。(つづく)
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