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2019-05-28 00:00
(連載2)財界人の警告「平成は敗北の時代」
中村 仁
元全国紙記者
経済が政治に従属する傾向が世界的に強まっています。その最先端は米国でしょう。トランプ大統領は関税摩擦が株価の下落を招いているのを見て、米連銀(中央銀行)に利下げを迫っています。中央銀行の独立性、中立性は、主要国で政治に脅かされています。大統領選での勝利のように、政治は目先のことを優先しますから、ブレーキをかける存在として、中央銀行の中立性が必要です。
日本ではすでに政権と日銀が一体化してしまっています。日銀が大量に国債を購入(3月末の保有額480兆円)し、赤字財政に対する危機感が高まらない装置になっています。しかもゼロ金利ですから、国の国債利払い費は8兆円まで縮小しています。おまけに最近は、「日銀が保有する国債は返済しないですむようにする。そのために永久国債に切り替える。」「米国では財政赤字の拡大を容認する現代金融理論(MMT)を巡る議論が活発だ。」などの声が国内で聞かれます。財政赤字に歯止めをかけるどころか、「そんなことをしたら、景気が悪くなる」と、財政、金融の正常化と反対方向の議論が目立ちます。
それに対して、「財政と金融が一体化し、世界中にあふれたマネーが10年ごとのバブルの生成・崩壊を起こしている。資産バブルを起こす仕掛けを政治が作っている」という警告が絶えません。1987年のブラックマンデー、97年の東アジア通貨危機、2008年のリーマン・ショックです。金融専門家らは「グローバル・マネーの対名目GDP比は上昇を続けている。07年3月は77%だったのが、18年末は120%。」「グローバルな資産バブルがいずれ崩壊する恐れ」との指摘です。「米国の景気悪化が起きる際には、企業の過剰債務によって、その影響が増幅される」(米FOMC)との見通しでです。経済政策の政治への従属は、世界経済に様々な歪みを生み出しています。日米欧の超金融緩和で金利が低下し、マネー市場における金利の機能がマヒしています。
著名な米政治学者、「ユーラシア・グループ」主宰のイアン・ブレマー氏が日本をほめちぎっています。「経済がほとんど成長していないのに、国家がむしばまれて分裂していない唯一の国だ。日本はますます多くの国にとって模範となっている。先進国の中で最も強力な指導者は安倍首相だ」と。ブレマー氏は日本市場を開拓したいのですかね。日本の政治は、出口のみえない金融財政政策の拡張、膨張によって支えられているのです。日本には最大の弱点があるのに、おとなしい経済人、おとなしい有権者、おとなしいメディアが声をあげません。政治の安定が、金融財政の巨大な犠牲の上に立ったもろい構造であることを、ブレマー氏はきちんと知るべきです。(おわり)
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