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2019-05-22 00:00
(連載2)丸山議員戦争発言問題を考える
倉西 雅子
政治学者
将来的な国際情勢の変化を考慮すれば、たとえ現行の憲法には反するものであっても、危機管理の一環としての政策提言や仮想の事態を想定した議論に対して、一切、言論を封じてしまうことには疑問を感じます(そもそも、憲法改正を主張することさえ違憲行為となってしまう…)。ましてや、北方領土がまさしく戦争、即ち、ソ連邦の侵略によって奪われた日本国の領土であった点に思い至りますと、武力による自国領土の回復は、倫理に照らして「絶対に間違っている」とは言い切れない側面があります。北方領土は自国領ですので、他国の領土を武力で奪う利己的他害性を有する侵略行為ではなく、正当防衛の論理が成り立ち得るからです。拒絶反応的に言論の自由に制約を課しますと、結果として、重大なリスクを招くこともあるのです。
もちろん、丸山議員は、唐突に問題となった質問をぶつけるよりも、戦争に至るまでの国際情勢の変化や憲法問題への対応、さらには、実際に戦争に及んだ際に問題となる日ロ間の戦力差などについても詳しく語るべきでした(一つ間違えると日本国は核保有国であるロシアによって焦土にされてしまう…)。政策議論として語れば、かくも激しい反発を招くこともなかったかもしれません。なお、私見を述べれば、日本国の政治家としては、国際法秩序の維持・発展に全力を尽くすと共に、対ロ政策としては、両国間の領土交渉が決裂したとしても、最終的には司法解決に持ち込める道筋を付ける方が得策となるのではないでしょうか。
以上に丸山議員の戦争発言について考えてみましたが、少なくとも、この件でロシアに対して謝る必要がないことだけは確かなことです。ガルージン大使は、「戦争という言葉や、ロシアの混乱を望むようなことは、非常に不快だ」と述べたそうですが、ロシアこそ、北方領土を含め、国際法を無視して戦争で周辺諸国の領土を奪い続けてきた国家なのですから。否、丸山議員の発言は、むしろ、北方領土をロシアの戦利品と見なすプーチン大統領の主張に沿っているとも言えるかもしれません(プーチン大統領は、秘かにほくそ笑んでいるかもしれない…)。
何れにいたしましても、戦争という言葉に対して条件反射的に批判したり、議員辞職を要求するよりも、これを機に、戦争という手段に訴えざるを得なくなるケースや、現実的な手段としての是非を議論すべきなのではないでしょうか。議員辞職の問題も、北方領土を取り戻す政策手段については、同議員も参加するオープンな議論に付した上で、有権者の判断に任せるべきではないかと思うのです。(おわり)
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