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2019-04-24 00:00
(連載2)米中貿易戦争の行方
倉西 雅子
政治学者
例えば、第一次世界大戦後、各国とも金準備不足となり、全世界的に金輸出禁止措置が拡がりました。その後、日本国では1930年に浜口雄幸内閣が金解禁に踏み切りましたが、円高となる旧平価の下で解禁したため、大量の金流出が発生しています。金解禁による混乱は、高橋是清内閣の下で再禁止措置が採られ一先ずは終息を見るのですが、金本位制は、経済混乱の主要な要因ともなったのです。
因みに、目下、各国が外貨準備として金の保有量を増やす傾向にあるため、金本位制への復帰も取り沙汰されていますが、貿易収支と国内経済が連動する金本位制の仕組みからしましても(為替相場も均衡優先で決定…)、国際通貨制度としての金本位制の再登場は不可能と言わざるを得ません。1970年代のブレトンウッズ体制も、崩壊すべくして崩壊したのです。
金本位制が放棄されたとはいえ、今日でもこの側面に変わりはありません。金であれ、国際通貨であれ、外貨準備が底をつけば、それ以上貿易を継続することは不可能となるからです(支払手段の不足による取引の継続不可は、全ての商取引にも普遍的に言える…)。今日の保護主義の復権は、トランプ政権による利己的な自国優先主義の結果というよりも、自由貿易自体に内在する貿易不均衡をもたらすメカニズムにこそ、根本的な原因があるように思われるのです。貿易収支の不均衡は「金融分野での逆流によって、国際収支としては均衡できる」とする見解もありますが、貿易黒字国から貿易赤字国への資本の流入は、融資や投資の形態をとるので、過剰債務や経済支配といった別の問題を引き起こしてしまいます(ただし中国は、急激な経済成長のための資金を外資に依存したため、貿易黒字国でありながら債務国でもある…)。
米中関係については、両国の間に横たわる問題は経済のみではなく、台湾海峡や南シナ海等で高まりつつある軍事的な緊張や、過酷さを増すウイグル人弾圧や国民監視体制の強化等、人権問題もあります。こうした諸問題を考慮しますと、米中首脳会談は政治的な理由から決裂するかもしれません。何れの結果を得るにせよ、時代の転換点を迎える今日、米中首脳会談は自由貿易主義、あるいは、グローバリズムの限界を象徴しているように思えるのです。(おわり)
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