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2019-04-11 00:00
(連載1)米朝首脳会談決裂が示す独裁体制の限界
倉西 雅子
政治学者
報道に拠りますと、北朝鮮では、ベトナムで開催された第2回米朝首脳会談が物別れに終わった責任を問われ、事前交渉を担当した北朝鮮の金革哲米国担当特別代表が対米交渉の職を解かれたそうです。いかにも北朝鮮らしいこの処分、図らずも独裁体制の限界をも示しているようにも思えます。
金革哲氏の他にも、交渉団の一員であった金聖恵統一戦線策略室長にも責任追及が及ぶと共に、同会談に臨席した女性通訳も決裂を決する重要な場面で通訳を怠ったとして処分対象に名を連ねているとされます。これらの処分理由を検討してみますと、簡潔に表現すれば、政策決定者に正確な情報を伝えず、また、交渉相手にも同決定者の意思をそのまま伝えなかったという、情報伝達の不正確さや歪曲が問題視されたこととなります。
独裁者のご機嫌を損ねぬように、部下達が独裁者の耳に心地よいように情報を改竄して独裁者に伝えたり、マイナス情報を勝手に握りつぶしてしまう現象は、しばしば独裁体制の欠陥として指摘されております。政策決定権の個人への集中を特徴とする独裁体制では、収拾された情報の真偽を慎重に分析したり、重要案件を合議に付すシステムはありませんので、誤った情報に基づく判断が国を傾けるリスクが高いのです。部下達は、国家や国民ではなく、独裁者個人に対して自らの忠誠心を捧げ、ひたすらに奉仕する立場にあり、人事権をも独占する独裁者の不評を買えば即座にその首は飛ばされます。国民のみならず、統治機構の官僚層にも恐怖政治が厳格に敷かれているのであり、このため、独裁者の権力掌握レベルに比例して、判断ミスのリスクも高まるのです。
こうした独裁体制の欠陥を解消しようとすれば、独裁者は、部下の介在を排して自ら全ての統治に関わる行為を行う必要があります。例えば、米朝首脳会談においてトランプ大統領との決裂を回避したいのであれば、金委員長は、予備交渉の段階で直接に交渉に参加し、アメリカ側の意向を正確に把握しておくべきでした。また、通訳ミスによるリスクをなくすには、英語等の語学力を磨くといった課題を自らに課すべきでもありました。もっとも、金委員長は、スイスの学校で教育を受けていますし、英語を含む数か国語に通じているとも伝わりますので、通訳ミスの件はやはり責任転嫁なのかもしれません。(つづく)
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