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2019-03-15 00:00
(連載2)情報管理の重要性
緒方 林太郎
元衆議院議員
何故、アメリカがこの案でOKを出したかと言うと、日本側から「完全に関税化すると、アメリカのコメなんて日本では売れませんよ。食糧庁(当時)による国家貿易でガチガチに管理する形で合意すれば、アメリカ産米に配慮できるでしょ。」と囁いたからだと言われています。今でも、日本の輸入の半分はピッタリとアメリカ産米である事からしても、そういう密約を誰かがしたんだろうな、という事を窺わせます。なお、その後も、アメリカから「コメの自由化」を求められる時はよくこの理屈を出してアメリカを説得して来ました。
さて、日本流の理屈による関税化阻止による対価は、先述の通り、関税化していれば3%から5%で良かったのに、関税化しなかった事で4%から8%という加重された輸入機会の提供(低関税輸入)を課せられたという事です。当時は世論が沸騰しており、かつ、東亜日報のスクープ等で、何よりも「関税化阻止」に重点が置かれてしまったわけです。しかし、ウルグアイ・ラウンドが終わり、WTO農業協定が実施されるようになってくると、冷静に考えて、この「関税化阻止の対価」がバカバカしく見えてきます。本来よりも過重な輸入義務を課せられているという事への違和感が強くなります。そして、もう一度よく考えてみたら、二次税率を極めて高く設定出来る事に気付き(最初から分かっていたのですが)、低関税輸入枠以上の輸入は生じない事が分かったのです。であれば、加重された輸入枠なんてバカバカしいだけじゃないか、という事で、1998年に中川昭一農林水産大臣の下、「やっぱり関税化します」という事で条約改正交渉と国会承認手続きをやります。簡単に言うと、4%からスタートして毎年0.8%ずつ増えるルールだったのを、最後の2年だけ0.8%から0.4%の増加に抑えたという事です。なので、今の輸入量は消費量の7.2%です。二次関税は341円/Kgと禁止的に高く、黒米とか特殊なもの以外は輸入されないようになっています。「関税化阻止」と「関税化」の違いは、「(決まった量以上は)絶対に輸入しない」と「(決まった量以上は)絶対に輸入できないくらい高関税である」という事の違いでしかありません。
最初から関税化していれば5%で済んだ話が、現在7.2%ですから、2.2%分多めに輸入しなくてはならない状況です。もう少し付け加えると、上記で何回か「消費量」と書きましたが、あれは1986~88年の平均消費量をベースにしています。その後、日本はコメ離れ、少子高齢化、人口減少といった要因により、コメの消費量が劇的に下がっています。1986~88年の平均消費量は、現在で換算すると多分、消費量の10%を超えていると思います。幾つかの過程を付けて、現在の消費量の5%でいいのであれば、ミニマムアクセスでの輸入量は半分くらいで済むと思われます。
この結果、輸入したコメの保管料、援助で出す時の国際価格との差額補填等の形で、かなりの国民負担となって跳ね返っています。農水省は特別会計で一括処理しているので、「個々の数字は出せない」とういうような事を言うので正確な事は分かりませんけども、過去からの積算で行くと、2.2%の増分だけでも一千億円を大きく超える国民負担増になっているはずです。冷静に判断していれば、情報漏れが無ければ、もしかしたら国民負担はもっと少なくて済んだかもしれない…。当時の「関税化阻止」の大連呼の雰囲気を思い出す時、そんな理屈はすべて無責任な後付けに過ぎないわけですが。ただし、あの改革は農林水産官僚の方が、かつて「あの東亜日報のスクープのせいでコメの改革は5年遅れたかもしれない。」と言っていたのを思い出します。(おわり)
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