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2019-03-05 00:00
(連載2)自由貿易協定(FTA)の将来
緒方 林太郎
元衆議院議員
1995年にWTO協定が出来た時、その中に「千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第二十四条の解釈に関する了解」というものを含めました。そこには以下のような事が書いてあります。(前文抜粋)「(1)関税同盟及び自由貿易地域が、千九百四十七年のガットが作成されて以来その数及び重要性において大幅に増大し並びに今日世界貿易の相当な部分を占めることを認め、(2)関税同盟を組織し及び自由貿易地域を設定する協定の締約国の経済の一層密接な統合によって可能となる世界貿易の拡大への貢献を認め、(3)構成関税地域間における関税その他の制限的な通商規則の撤廃がすべての貿易に及ぶ場合にはそのような貢献が増加し、他方において、貿易の主要な分野が当該撤廃の対象から除外される場合にはそのような貢献が減少することを認め、」(引用終了)。
上記(1)では現状認識として「数、貿易量共にFTAの占める割合が増えた」、(2)として「それが世界貿易の拡大に繋がっている」、(3)として「FTAとしてより一体化が進むのはOK、いい加減なFTAはダメ(経済圏としての一体化への例外は少なくしろ)」となっています。「GATT起草時には想定しなかったようなFTAの拡大を追認している」と見るべきなのか、と思っています。
ただ、私は「どんな説明をしようとも、GATT24条のFTAが志向するのはブロック化」だと思っていて、今のようなFTAが百花繚乱の状況というのは、世界のあちこちでブロック化がどんどん進んでいっているようにも見えます。そこで思ったのが、GATT24条にある「関税(その他の制限的通商規則)を実質上すべての貿易について撤廃するならOK」という規定を受け、上記の「了解」の(3)で述べられているのは「よりブロック化を強固にしろ」ということではないか、ということです。そして、今のようにFTA百花繚乱の世界の中では、出来ていくFTAは「経済圏としての一体化」なんて、そもそも実現していないものばかりです。そうすると、経済圏として一体化するはずもない国同士のFTAに対して「関税(その他の制限的通商規則)を実質上すべての貿易について撤廃するならOK」という規定で「より強固なブロック化」を求めるのを、経済学上正当化する理屈はないのではないか、と思えて仕方ないのです。あえて言えば、「『最恵国待遇』の例外として自由貿易地域を作りたいのなら、気合入れてやれ。根性見せろ。」くらいの意味合いしかないような気がするのです。最近、「何故、FTAで厳格に関税の撤廃をやらなきゃいけないのか。それはブロック化の強化であり、多分経済学的には正当化できない。そして、ブロック化を強化したとしても、そのFTAの経済圏は一体化していないではないか。」という問を自分に立てています。
ただし、ルールとしては「関税(その他の制限的通商規則)を実質上すべての貿易について撤廃するならOK」であり、それを厳格にするのが世界のスタンダードになりつつあります。となると、次善の策として、世界全体で均等に関税を下げるというGATT・WTOの取組みには限界があるから、個々のブロック化をどんどん被せていく事で世界全体の貿易の自由化が進む、というふうに世界のパラダイムが変わったと見た方がいいのかもしれません。(a)GATT・WTOを通じて、世界全体で均等に関税を下げていく「最恵国待遇」での自由化を目指すのか、(b)「ブロック化」である自由貿易地域をたくさん世界全体で被せていく事で、世界全体の貿易の自由化を図るのか、(c)そもそも自由化そのものをこれ以上は目指さないのか、選ぶ戦略はこの3つのバラエティか、またはその組み合わせにしかならないはずです。理想を追うなら(a)、現実を追うなら(b)です。ただ、(c)の中にも拝聴すべき意見がある事は知っています。私は出自がGATT・WTO系なので、どうしても(a)を追いたくなりますが、最近では完全なマイノリティですね。(おわり)
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