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2007-05-16 00:00
連載投稿(1)中国共産党の歴史観は二重構想
中兼和津次
青山学院大学教授
前回、中国の歴史認識について述べたが(『議論百出』2007年2月6日)、その議論を補足する意味で2、3述べてみたい。予めお断りしておくが、私は歴史学者ではないし、歴史及び歴史学にかんする専門知識を持つものではなく、以下の議論は全くの「素人の議論」に過ぎないことは承知している。
私の理解では、中国共産党の歴史観は二重構想になっており、一つはマルクス主義史観であり、これが表層を形成し、もう一つ中核部分に「勝者史観」ともいうべき史観がある(あるいは、「中華(思想)歴史観」なるものとの三重構造かもしれないが、この点についてはいま触れない)。両者は決して無関係ではないが、また同じものでもない。たとえば、前者の唯物史観からいえば、歴史は封建制から資本主義へ、さらには社会主義へと「進化する」のが当然で、「半封建、半植民地」だったとされる旧中国が社会主義へ移行するというのは解釈が苦しくなるので、レーニンが展開した「弱い環からの革命論」で正統派マルクス主義からの批判を切り抜けようとする。他方、後者の史観からいえば、共産党の正統性は中国革命を成功させたことにあり、「実践こそ真理の最高基準」だから、勝者の理論は歴史的に正しいことが証明されたことになる。悪くいえば、「勝てば官軍」なのである。
現在中国は資本主義に向かって驀進中だが、マルクス主義史観を公式に捨てないのは、もちろんマルクス主義を教理に掲げる共産党支配の正統性を守るためである。彼らのロジックを翻訳すれば、「いずれは本格的社会主義社会になるが、中国はいまその初級段階だから、資本主義のある種の補習をしているに過ぎない」ということになろう。資本主義が最高度に発展すれば、「生産力と生産関係が矛盾して」革命が起こるはずなのだが、こうした正統派マルクス主義史観を彼らは取らない。せいぜいこの史観から、社会主義は資本主義より優れたものと前提されているから、中国が進める「社会主義市場経済」は資本主義より優れた市場経済ということになろう。(つづく)
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